分厚く光る照明器具
湿ったシーツが不愉快に絡む
腕の置き場所がない

半開きの扉から顔を出す明日
廊下の先には恐るべき黄昏れ
寝間着を脱いで歩く

仮面に穿たれた穴から虫が睨む
積み上げられた昨日に無数の綻び
見張りを失った塔は
なおも天を貫こうともがいた
一枚透かした太陽が嘲笑う

明日は明日に還ってしまった
扉を閉ざして閉じ込めて
また明日覗きに来るだろう

目覚まし時計の切実な訴えに
牛乳とチーズが慰めを吐く
おはようの意味を売り払って
対価に怠け者のレッテルを

戸棚に並んだギザギザのグラス
蟻の行列に混じりたい
果てしなく矮小なものになって
グラス一杯の酒で溺れたい

消化器が部屋をピンクに染めたのに
まだ足の爪だけ青い
電話も青い
洋服も青い
部屋はまだ染まらない

空気を渡って青の下へ
デーッと唸って走る蛇列車
途切れ途切れに鳴くひよこたち
畑の管理人は何処へ行った?
苦しい、苦しいとニラが泣く

薄ら寒い蛇の腹の中
ニーチェをめくる指が震える
人間的な、あまりにも人間的な生理現象
お化けの鞄が口を開いて
魂が飛び込むのを待っている

摩天楼には空が足りない
雪が降れば足元も足りない
真面目な顔で道を渡るお化けたち
放り込まれたひよこが歌う

仮面とスーツでヒーローに変身
地球に刺さった棘に登り
今日も愛すべき人々を救う
浪漫と挫折味のおにぎりを頬張り
空飛ぶ21世紀を謳歌する





090925


あきゅろす。
リゼ