ちびミタちゃん育成日記(トラッドの場合)


《みさや 様より》



【ミッターちゃんが小さくなるまで】
ぬるま湯男子ことレシーバーとゲームをしていたミッターことトランスミッターだったが、彼とのゲームに負け八つ当たりをしたところゲーム機が爆発しその煙の中からはえらく小さくなってしまったミッターの姿が。開発局に連絡しみたところそれは一種のバグである事が判明し治るまでミッターは小さいままとなる。これはそんなちびっこミッターと彼女の世話をすることとなったぬるま湯男子レシーバーの話のとある一部分である。(説明長い)



それはそれはあまりにも突然の出来事。来訪者が来たかと思いドアを開ければそこにいたのは彼女のよく知る二人であってしかしその一人は何故かもう一人に抱え込まれていて彼女は目を白黒させて「え、待って…ふぇええ…!?」と声を上げる。それを見かねた来訪者が溜息を吐いて口を開けた。

「突然すまん。これにはかくかくしかじかな訳があってだな…っておい、トラッドしっかりしろ」
「チーッス!こんにちわトラッド」
「ふぇえええ…どういう事なのレシーバー君…もう一度お願いします」

来訪者は彼女―――トラッドのよく知る人物であるレシーバーとトランスミッターだ。普段ならば抱え込まれていないはずのトランスミッター…ミッターは何故か今レシーバーに抱え込まれておりその姿は小さい。
そうしてようやく彼女が小さくなった訳を理解したトラッドはほんの少しばかり頭を抱えて二人を見遣った。通常通りの冷静なミッターの片割れのレシーバーとその腕の中で彼の頬を弄っている彼女は相も変わらずで事の重大さに気づいていないようだ。それからレシーバーと目が合うと苦笑をして「…それで、今日はどうしたの?」とトラッドは彼に尋ねた。

「ああ、すまんが今日一日ミッターを預かってくれないか」
「え?」
「仕事なんだ、俺だけ」
「あら、そうでしたの…」
「悪いな、いつもは執行部のところで預かってもらっているんだが…」
「いいよ、気にしないで!」

両手を前に持ってきて断らない事を示すと、彼はほっとしたように安堵の溜息を吐いた。次いでミッターを下し、その頭を撫でてやってから彼女と同じ視線で彼は話しかける。

「いいか、ミッター。今日一日トラッドのとこに世話になるけど、悪い事すんなよ?ちゃんとトラッドの言う事を聞く事」
「うん!ミッターちゃんと言う事聞く!」
「よし、後は頼んだトラッド」
「あ、はい。仕事頑張ってね!」

ミッターがトラッドの元へ行くのを見送った後、レシーバーは仕事へと向かう。それから二人は中へと入り、そのドアを閉めた。さあ、レシーバーなしでミッターは一日を過ごす事ができるのか…波乱の一日の幕開けだ。



中へ入ってからトラッドはまず何をするべきか暫し思案して、ミッターは見るものが新鮮なのかどれも興味津々に目を輝かせて見ている。部屋の間取りや雑貨、それから食器、机に置いている楽譜に本。ミッターが見ているものは全てそれと決して同じではないのだ、小さくなってしまった今では。彼女は今や片割れの援助なしに生活する事も満足にできないし、出来る事も少ない。
トラッドはうーんと唸ってそれから顔を上げてミッターに話しかける。

「ミッターちゃん、何がしたい?」
「トラのしたい事!ミッター、何でもいいよ!!」
「あらまあ…そうですわねえ」

思い切って尋ねたはいいが、返答がこれでは全く意味をなさない、と一人また頭を抱えそうになる彼女だが「そういえば」と口にしてまた辺りに興味を示しているミッターに声をかけた。ミッターはゆっくりとトラッドの方へと身体を向けて手に持っているものも一緒にそちらへと向けた。

「いつもは白君…執行部君のところにいるって聞いたけど…」
「うん、しっこーぶのとこで怒られてた」
「え!?どうして?」
「うーんとねえ、うるさいだのジャマするなだの、なんかいっぱい言われた気がするー。でもねえしっこーぶ、全部許してくれるんだよ」
「へえ、意外だなあ…白君が、ねえ」

手に持っている本を開きながらミッターはそう言う。それを聞いたトラッドは少しばかり驚いたがそっと心の片隅に留めておくことにしていおいた。そんな事をやっていると床に座り込んだミッターが「ねえねえ、これ何て本?」と尋ねるので、彼女はミッターに視線を合わせてその近くに座り込む。
ミッターが手にしているのは古い童話で酷い扱いを受けている子が一夜限りお姫様になると言ったそんな話がたくさん入った一冊だ。それに興味を示したのか、ミッターは読んでと彼女にせがみ、トラッドもまた小さい彼女を膝上に乗せてその本をはっきりと聞こえるように読み聞かせる事に。表情こそは見えないが、それでも膝上の小さな女の子が確かに嬉しそうにそして楽しそうでいるのが本を読み聞かせているトラッドには伝わった。


そうしていつの間にか二人して眠っていたようで、先に目を覚ましたのは膝上で話を聞いていたミッターだった。こしこしと寝ぼけ眼を擦って辺りを見回した後、ぶつぶつと誰にも聞こえない声量で何か言い出した。そうしてその最後には「メッセージを一件受信しました」という機械的な声を出して、再び辺りを見回した。

「シーバーもう来る…トラ、起きて」
「…」
「起きてー、そろそろシーバー来るー」
「……んんっ」

その声で目を覚ましたトラッドは窓の外を見て酷く驚いた。外はもう陽が沈み真っ暗でこの部屋の中も当然真っ暗だ。しかし慣れてきた目が最初に捉えたのは小さな少女で、彼女は急いで部屋の明かりをつけた。中途半端に開いたままの本やらなんやらが散らかっていて、あのまま寝てしまったのかと気付いた彼女だが、ふとスカートの裾を引っ張られる感覚を覚えそちらを見てみると小さな手で引っ張っているのはやはりミッターで唐突に「紙とペン貸してー」と言い出すのでトラッドはそれに頷いて彼女にそれを渡す。何故紙とペンが今必要なのかとふとトラッドは考えるが、ミッターが近くのテーブルで何かを書き始めた事によりその行動に気付くのだった。

「…日記?」
「んー。シーバーがねえ、今日何があったかとかちゃんと書いておけって」
「へえ…」
「ミッターは元に戻ったらちっちゃかった時の事、覚えてないかもしれないんだって。だから今日何があって、何をしたか書いて、残しておくんだってー」
「……そうなの」

何気ない言葉だが言っている事は酷く、少しばかり悲しいものだ。鼻歌混じりに紙にペンを走らせて今日の出来事を描くミッターはいつか元に戻ったとしても忘れてしまうのかと思うとそれはトラッドにとって新たな一面を知った今では寂しいもので。言葉にはしなかったものの心の片隅でそんな事を思ってそれをそっとそのまま閉じ込めた。
丁度日記が書き終わる頃には部屋の外からベルを鳴らされて、ドアを開けたその先には仕事終わりでそのまま来たミッターの片割れの姿がそこにはあった。それに気付いたミッターは直ぐ様、彼に飛びついて「おーそーいー!!」と精いっぱいその小さな手で彼を叩く。

「すまんな、トラッド。助かった」
「ううん…こちらこそ楽しかったです」
「えへへー、シーバー見て見て!」

無邪気に笑いそう言うミッターは先程書いた紙を彼に渡して彼もそれを受け取って目をざっと通す。それが終わると時間も時間なので帰るかとシーバーがミッターに提案して彼女もそれに大きく頷き、シーバーに抱き着こうとしたが、ピタッと止まってくるりと踵を返した。

「ミッター?」
「ミッターちゃん、どうしたの?」
「んとねー」

トラッドの方へと向かったミッターは彼女のスカートの裾を引っ張ってしゃがむように促すと可愛らしい笑みを浮かべて彼女の右頬に軽くチュっと音を立てて口付けた。それからすぐに離れて「今日はありがとう!」と言ってミッターはシーバーの元へと戻り抱き上げるように彼に伝えた。
トラッドは暫し沈黙を貫いて、キスされた方の頬を手で押さえながら立ち上がって入り口まで二人を見送る。

「今日は本当に助かった。トラッドサンキュー」
「いいよ、二人ともまたね」
「んー」
「トラまたねー!」

そうしてそのまま二人はトラッドの元を去り自分たちのあるべき場所へと戻り、彼女も部屋の中へと入った。見渡すと今日あった出来事を物語っていて片付けるのが惜しいと密かに思った事は彼女は誰にも口にはせず、床に落ちた本を広い上げては「…また一緒に読めたらいいな」と独り言を漏らし微笑んだ。



その頃、部屋へ戻る道すがらのミッターとシーバーはと言うと。

「にしてもミッター」
「なあにー?」
「最後の部分はいらん。消すぞ」
「ええ!?何でー!」
「お前はセクハラ魔になりたいのか」

シーバーはミッターの書いた日記を見て溜め息混じりにそう言って、ミッターはミッターで不満げに口を尖らせている。
その日記は確かに今日の出来事が記してあるが、彼がそれを読んで気に喰わなかったのは。

「だってトラのおっぱい大きかったんだもんそれも出来事だもん」
「はあ…」

そんな事を言われている事にトラッドが気付く事など全くこれっぽっちもない。それでもミッターは元に戻ったらとりあえずまたトラッドと遊びたいとは思っていた。言葉にせずともそれは彼にも伝わりまたシーバーは溜め息を吐いて、今日の出来事を語るミッターに耳を傾けるのだった。





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みさやと言います。ちっこいミッターちゃんとトラッドちゃんのトラトラちゃんを書きました。全力でモジュールとはですがそこはご愛敬でお願いします!!トラトラちゃん可愛いトラトラちゃん!!


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