ラブドワン

ぁすかさまへ愛を込めて。

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いつも買い物に行く店の初めて入ったフロアでカートを押す。

「まだどっちか分かんないから黄色がいいよね」

赤い花柄のワンピースにグレイのボレロを着こなす彼女の笑顔はとても優しかった。二ヶ月後の出会いが近づけば近づくほど美しくなるエディの横顔につい見とれていたその時、彼女は

「あんたももうお父さんかぁ」

と呟いた。その言葉はどこかとても重たいもので、心の中で色々な気持ちを交差させる。
お父さん。父親。親。そう、私は親になるのだ。もうすぐ産まれてくるであろう新しい生命の父親に。

「どっちか楽しみだ」

もうすぐ会える。気持ちは高鳴るばかりだ。

「うん。楽しみ」

今のこの幸せを手に入れるため、あの頃の私は必死だった。君と出会った日から少しづつ、それでいて確実に気持ちを募らせ、それをやっとの思いで告げ、恋人になったのだ。今でもその時の事はよく覚えている。



いつもの用に報告書を持ってきたエディはいつもと変わらない顔をして、執務室を出ていこうとした。靡く赤いコートと揺れる金の髪を目で追うと、何だかずっと追い掛けていたような気がして、気のせいだと思ったら気のせいじゃなくて、白い手袋に包まれた手を掴み引き止めていた。

(ああ、やっと捕まえた)

きょとんとした顔がこちらを振り返ると同時に、人生で初めて本当の愛を込めた告白をした。たった三文字の言葉は思っていたよりも短くて、ちゃんと聞こえたのだろうか。まさか何か間違えた事を言ったんじゃないだろうか。と一瞬の内にお腹が痛くなるくらい頭の中を占拠する。可愛い二つの瞳は目の前にいる男の言葉が読み取れないのか、瞬きさえ忘れて私を映していた。

(ど、どうしよう)

情けないことに、女の子一人にこんなに胸をドキドキさせるのは初めてで、経験値ゼロの私はどうすればいいのか分からなかった。まだ左手で握ったまんまの彼女の手に力を込め、もう一度、想いを届けようとした。するといきなり

「…っ」

エディは私の胸板に顔を押し付けて、細い腕を背中に回し、軍服とその下のシャツをぎゅっとにぎりしめた。

「…エディ?」

「っ…いきなりなんて、ずるい…俺も、好きだっ」

一度は耳を疑ったが、かわいらしい精一杯の返事に、私も返すように華奢な身体をまるごと抱きしめ、ありがとう。と耳元でそっと囁くと、彼女の甘い甘いファーストキスを静かに受け取った。

その後は君がいない夜との戦い。たまさかの夜の行為も、まだ旅を続ける彼女とでは、やはり行為本来の意味が欠けたものになってしまう。それでも愛がある。その時はそれだけで、もうよかった。でもやっぱりエディとの恋愛は難しかった。

そして、約八ヶ月前。"子供が欲しい"と微笑んだ彼女を私は何の躊躇いもなく抱きしめた。私達を遮る物なんていらない。全てを捨て、再び繋がり合う。求めたのは快楽と愛だけではない。目に見える確かなもの。



「名前、決めてくれた?」

「まだだよ。これから二人でゆっくり決めよう」

私はもう、一人ではない。エディの夫であり、産まれてくる子の父親であり、そして男だ。この腕で家族を守る。そう誓った。

「ゆっくりゆっくり。ずっと一緒にいて」

君に会うまでの長い道のりを忘れないように胸に刻み込む。君の見てるものすべてを私もそばで見ていたい。

「ああ、ずっと一緒だ」

エーデルワイス。私の告白を受け入れてくれてありがとう。私のプロポーズに涙を流してくれてありがとう。私の子を身篭ってくれてありがとう。

ありがとう。

これからもずっと、ありがとう。



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卒業、半年、そして10000打おめでとうございます!こんなぐだぐた文ですが、よろしかったら受け取ってください´`*(ドキドキ

男の子か女の子か分からないから黄色にしよう。というのは実話です。私が産まれてくる時、両親は性別を知らず、名前も男と女の両方考えていたとか。
きっとロイとエディも楽しみにしたくて性別は聞かないと思います´`


―ラブドワン(loved one)…最愛の人

リゼ