電車に乗って暫くすると、テニスラケットを持った高校生3人がテニスラケット持ち方について話し始めた…のだが…

「バーカ、お前ら自分のグリップの握り方も知らねぇのかよ。トップスピンを打ちてぇんなら、ウエスタングリップだろ。こうやってラケットの面立てて、握手する感じで握んだよ!ほら!」
…間違ってるうえにその場で素振りを始めた。
向かいの席に座っているみつあみの女の子に当たりそうだ。
「おぉ!流石北校テニス部のエースだけのことはあるな!」
いや、だから間違ってるから!
「バーカ、常識だろ!」
いや、色々間違ってるし!
テニスの常識間違ってるうえにマナーも間違ってるから!
本当に女の子にラケット当たりそうだから!
電車の中でラケット振り回すなよ!

そろそろ限界で私が席を立って注意しに行こうとすると、リョーマが私の手を握って止めた。
「ねぇ。」
リョーマの声に高校生たちはこちらに振り向いた。
「うるさいんだけど。」
あまりにはっきりした物言いに暫く沈黙が落ちる。
その時電車が揺れてさっきまで高校生が持っていたラケットが床に転がった。それを拾おうと、高校生は床にしゃがむ。
「へっ…参ったぜ、小学生に注意されちゃあな…」
「ピンポーン!置いたラケットを上から包むように持つのが正しいウエスタングリップ。」
「なんだと?」
私は高校生の言葉を無視して、リョーマのあとに言葉を続けた。
『因みに、お兄さんが言ってた握手するようにって握り方はイースタングリップだよ。』
「よくいるんだよね、逆に覚えてるやつ。」
リョーマの言葉で止めを刺され、高校生はキレた。
だけど電車は丁度駅に着いた。
「おい、てめぇーら!」
「優希行くよ。」
『うん!』
すっきりした!

そして私たちは手を繋いで電車を降りた。
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リゼ