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≡優れた頭脳<恋愛≡
















「生徒達は大丈夫なの?」




ある朝食時。
リーマスが笑顔で切り込んだ。



「子供は苦手部類じゃないよ」

「そういうんじゃなくて、アレ」



彼の指差す方向には、寮生たちにプリントを配布しているスリザリン寮監の姿。



「君は昔、僕達やルシウス・マルフォイに要らぬ嫉妬をしていただろう?」



最近もしていた、とは言えない。
アミが曖昧に微笑むと、聡い友人は少しだけ嫌そうに眉を顰めた。茹でたジャガ芋にナイフを入れながら、アミはリーマスを見る。



「それが何?」

「『恋愛に歳の差は関係ない』って言うじゃないか」



スリザリン席にいるセブルスに目を戻す。ホグワーツ生の半数以上に畏れられ、嫌われている彼だが、一部の生徒には慕われている事をアミは知っていた。勿論、セブルスは気付いてないけれど、スリザリン以外の生徒にも何人かは彼を慕う子がいるのだ。 それなりに生徒に人気のある彼女は、子供達から他の教師達の愚痴をよく聞かされる。以前も相槌を打ちながら話を聞いていたとき、その内の一人が不意にぽつりと呟いたのを思い出す。



『厳しいけれど怒られたのは自分の落ち度だし、授業は他のどの先生よりも解りやすいし……怖いけど、嫌いでは無いかも』



もしかして、
教師と学生って、アリなの?





「アリだよ」





聞こえた穏やかな声に顔を向けると、リーマスが真っ黒な微笑みを浮かべている。
最早、皿の上のジャガ芋はマッシュポテトと化していた。



「そうか…アリなのか…」



呟いてナイフを動かし続けるアミ。
その視線の先には、生徒たちにむかって機嫌よさ気に演説しているセブルスの姿がある。




「セブルスとアミって、つかず離れずなのに浮いた噂が立たないよね」




面白そうにそれを見ながら、リーマスは砂糖タップリの紅茶に口を付けた。『脱狼薬』を調合してくれるのはありがたい。セブルスには本当に感謝している。しかし、たまにアミが調合してくれる薬は彼のものより断然と飲みやすいのだ。それは彼が意図的に苦くしていると悟るには十分過ぎる事実であり、勿論セブルスがアミと親しくする自分に対して嫉妬していることも同様にわかった。そうすると、それに対する悪戯心…グリフィンドールの性質…が蘇る。



(流石のアミでも、恋愛となると無力だなあ)



セブルスについて焚き付ければ、アミは信じられないくらい燃え上がるのだ。







「ねえ、リーマス」

「何だい?」



「恋愛と戦争には手段を選ぶなって、偉い人も言ってたよね」





戦争?








少しやり過ぎ?と思いつつ、リーマスはダークブラウンの瞳を見詰め返した。真摯な瞳で見つめられ、罪悪感が胸を掠める。しかし、掠めただけのそれは彼方に消えた。













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