エビバディポッキー!!
#11月11日はポッキーの日

「ポッキーゲームすっぞ!」

青峰っちがそう言ってきたのは、朝練が始まる10分前だった。

今日は11月11日。ポッキーの日。

いつの頃からか、日本のこの日はポッキーゲームをする日に変わっていた。こんなはた迷惑な日になってしまったのは、ポッキー会社の策略に違いない。

「はぁ?!イヤっスよ。なんで男とやらなきゃならねーんスか?」
「いいじゃん、やろーぜ。それとも…自信ねーのかよ?」

こんな言葉にあおられるなんて、自分は大概安っぽい。でも仕方ないか、相手は青峰っちだもんな。抗うだけ無駄だ。

「んなわけねーじゃん。俺、めちゃくちゃ上手いっスよ。今まで負けたことないっスもん」
ポッキーゲームに上手いとかって何。負けたことないとか何。…もう、俺テンパりすぎだろう。
「お、言ったな?」
ニヤリと不敵な笑顔がいちいちカッコいい。

ん、と言って青峰っちがポッキーの端を咥えて顎を突き出してきた。
えぇい!なるようになれ!と覚悟を決めて目を閉じてパクッとポッキーの反対側を咥えた。

うぅ、緊張ヤバイ。
足も手も強張って動かない。女の子との初キスだって、バスケの初試合だってこんなに緊張しなかったのに。いつの間にか俺はこんなにヘタレになったんだろう。


「……?」

ポッキーゲームは始まっているはずなのに、咥えているポッキーには何の振動もない。不思議に思いそろりと薄く目を開けてみると、真っ直ぐにこちらを見ている青峰っちとバチッと目が合った。
「…っ!〜〜?!」
ビクッと驚いたのも束の間、目を閉じる暇もないままサクサクサクサクというお菓子を噛み砕く慣れた刺激が咥えたままのポッキーに響く。ポッキーが、こんなに長いものだなんて思ったのは初めてだ。

あと少し。

寸前まで近付いた青峰の顔に思わずギュッと目を閉じる。


「かはっ、黄瀬ぇ。お前、全然じゃん。ダセェ」
「〜〜っ!」
明るい声で笑いながら新しいポッキーを咥える青峰の顔に、思わず持っていた鞄を投げ付ける。いてぇぞ!と大声で怒鳴る青峰っちを無視して、体育館へと走る。手に持っていたタオルに埋めるように隠した頬は、たぶん真っ赤になっているだろう。
だって。


カリッと音をたてて青峰っちが齧った最後、熱い感触がほんの僅かに唇を掠めていったから。



→青(→)←黄

青黄ちゃんの両片想いは、青峰っちが無自覚だと美味しいです。


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