霧崎瀬
#アンケートの項目にある 他校瀬・その他
#青黄ちゃん前提



これは、どういう状況だろうか?
寝ている健太郎と俺以外のレギュラーメンバーが、部室の隅にしゃがみ込み頭を突き合わせて丸くなっている。

部室でテーブルに向かい今日の練習内容や課題点などをまとめているとその輪の中から聞こえてきた会話に、俺の手は無様にも止まってしまった。


「うーん、じゃあ…花宮、先輩?」
「えー?それじゃ、他人行儀すぎるっしょ?」
「だったら、真先輩?」
「違うな、それはない」
「えー?!」


いつもの週末。いつもの部室。
練習が終わり部室にはいつものようにレギュラーメンバーが残っていた。別に待っていなくていいと言っているのに、こいつらはいつも俺が部誌を書き終わるのを待っている。ゲームをしたり、漫画を読んだり、寝ていたり。いつも過ごし方は様々だ。

いつもと変わらない光景。でも、2つ変わったことがある。

1つは、この春からこのいつものメンバーに1人、新しい部員が加わったこと。
もう1つは、今のこの状況。あんな隅っこで何を話しているのかと思えば…本人たちは内緒話をしているつもりだろうが、いかんせん同じ室内だ。聞こえるのは当たり前だと言うことに、気付いていないことが信じられない。


「なーんか、先輩って堅過ぎっしょ」
「で、でも!先輩は先輩っスよ!しかもキャプテンだし監督だし…あ!主将とか監督って呼ぶのはどうっスかね?」
「ないな」
「ないっしょ、マジで」
「有り得ないな」
「ひどっ!何でっスか?!先輩っスよ?年上っスよ?そんな、無理っスよ!」

輪の中心で、今年入った期待の新人が黄色い頭を揺らしている。

「黄瀬ちゃん、それじゃ意味ないっしょ?」
「でも…先輩なのに、そんな無理っス」
「そこをやるから威力があるんじゃないか」
「そーだよ、言っちゃいなよ」
「うぅ……じ、じゃあ…か、監督っち?」
「何それ?やる気あんの?」
「ひどっ!」

新人が必死に捻りだしたらしい案を原がバサリと切る。心なしか、くーんという子犬が鳴くみたいな声が聞こえた気がした。

「えっと……は、花宮っち?」

キュン。
すっかり止まった右手を見つめ、あくまでも平静を装いながら胸が変な音をたてる。

「うーん、もう一声!」
「えぇ?!」

山崎の雑な言葉にすっかり困り果てた声がする。
だから、お前らはいったいなんの話をしてるんだよ?

「……ま、ま、ことっち?」

キュキュン。
さっきよりも甘い痛みが胸に刺さる。
やばい、顔が熱い。

「もう少しだな。ココまで来たんだ、頑張れよ」
「うー、マジっスか…」
古橋の言葉に気弱な声が小さく漏れてくる。ちらりと横目に盗み見ると黄色い髪が頼りなげに俯いていた。
「それなら……ま、まこっち?」




「んぁ、そろそろ帰るか?……花宮、何してるんだ?」
ぐっすり寝ていた健太郎が、アイマスクをずらして寝呆けた声を上げたが、怪訝そうな声でこちらを見てきた。
当然か、机に突っ伏したまま動かないのだから。

その声に、隅っこで頭を突き合わせていた4人までガバッと顔を上げたのが分かった。
「あれ?花宮ー?」
「どうした、具合が悪いのか?」
「なになに、どったの?」
全然心配しているように聞こえない言い方をしながら立ち上がり近づいてくる。駄目だ、顔が上げられない…きっと真っ赤になっているから。

「あ、あのっ…」
3人の後ろから聞こえた控え目な声に、3人が場所を開けて新人を前に誘う。

「あの、えっと…」
どこか必死さの漂う声に口元を押さえながらゆるゆると何とか顔を上げる。

「だ、大丈夫っスか?…ま、まこっち?」


「あっ、花宮?!」
「あらら、まじ?」
「これは予想以上だったな」
「なるほど、これはレアだな」


何処かから、カメラのシャッター音がする。
くそ、覚えてろよ。死ぬほど後悔させてやる。





「まこっち?!あ、あの…本当に大丈夫なんスか?まこっち、机にうつ伏せになったまま動かないっスよ?」
「いーのいーの、大丈夫っ。放っておくほうがいいんだって。それより黄瀬ちゃん、クレープ食べに行かない?駅前のお店、今日やすいんだって。クラスの女の子が言ってたよん」
「あ、うん。じゃあ、行くっス。クレープは好きっス」
まるで後ろ髪を引かれるような声を出す新人を連れ、古橋を残して帰って行った。


「花宮、みんな行ったよ」
古橋の声に、ゆらりと顔を上げる。
「お前ら…覚えてろよ」
「どうして?花宮に喜んで貰おうと思ったのに」
「あぁ?!」
思わず漏らした剣呑な声にも、死んだ魚のような目は変わらない。
「黄瀬が、花宮のこと何て呼べばいいかわからないって悩んでたから。だから、花宮が喜ぶ呼び方をしたらって言ったんだよ。駄目だった?」
「っ…?!」





→アンケートにあった他校瀬。霧崎瀬。

その場合、きーちゃんは悪童をなんて呼ぶんだ??という疑問がどうしても解決できず、もうそこをお話にしてみました(笑)
結果、まこっちになりました。

霧崎かわいいです。
きーちゃん可愛いです。


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