君に触れたがる手










――アレルヤという人は


どうやら手を繋ぐのが好きらしい。

今だってほら、抱きしめて頭を撫でているのに左手は彼の手の中。



「…ねぇアレルヤ」

「なんだいルシア?」


私は腕の中のアレルヤに問い掛ける。

彼はその左目を、ちらりと向けた。

私は頭を撫でる手の動きを止めない。


「何でいつも私の手を握るの?」

「なんで、って…」


少し困ったように笑う。

そしてうーん、と考え込んだ。

まぁこれはただの素朴な疑問なのだが。

でもいつでも真剣な彼が私は好き。

誰も喋らない部屋の中。

この静寂すら、今は心地良い。

だってアレルヤが一緒に居るから。




「…お母さん」




ふと、唐突にアレルヤは呟いた。

私は引き寄せられるように、視線を下にいる彼に向ける。


「お母さん?」

「そう」


何でお母さんなんだ。

確かに歳はアレルヤより上だけど…。

でも、そんな歳でもないし。

第一私はアレルヤのお母さんじゃない。


「あはは、そんな意味じゃないよ」


どうやら顔に出ていたらしい。

腕の中で、アレルヤが苦笑した。


「じゃあ、どういう意味よ?」

「何ていうのかな。包容力があるというか何というか…」

「…随分と曖昧ね」

「ルシアの手は温かくて落ち着くんだ」

「そう?」

「うん。僕はお母さんのこと全然覚えていないけど、きっとこんな風にあったかい手をしてるんだろうなって」

「…そっか」


孤児だったアレルヤ。

それ故に超兵の実験に巻き込まれた。

小さい頃の話だから母親の事は知らない。

でも彼には確実にそれが存在していた。

きっとアレルヤは寂しいのだろう。


「…ルシア」

「なに?」

「僕は確かにお母さんに捨てられた」

「うん」

「でも、恨んではいないんだ」


むくりと身を起こして。

アレルヤは私の両手を包み込んだ。


「だって、こうしてルシアと出会えた。感謝してもしきれないよ」

「アレルヤ…」


祈るように目を閉じたアレルヤ。

彼は今、自らの生に感謝している。

そこには一片の悔いも存在してない。

ただ純粋に、喜びに満ちていた。

私はふっと息を吐いて、額をぶつける。


「…ルシア?」

「ありがとうございます」

「え?」


不思議そうな表情を浮かべた。

でも構わずに私は続ける。


「アレルヤを生んでくれて、ありがとう」

「ルシア…」

「そして、生きてくれてありがとう」

「っ!」

「私と出会ってくれて、ありがとう」

「……うん」

「私の傍に居てくれて、ありがとう」

「…うん」


一つ一つに相槌を打ってくれるアレルヤ。

その彼の優しさが、愛しくて堪らない。

私は最後に、綺麗な銀色の瞳を見つめた。



「これからも、私は貴方のこの手を握り続けても良いですか?」

「…っ、うん!」

「ありがとう、アレルヤ」



―貴方を愛せる全ての幸福に、感謝します

私たちはそっと互いの唇を重ねた。

強く強く、手を繋いで離れないように。



君に触れたがる手
(この手はきっと、貴方のためにあるの)


「あ、アレルヤ誕生日おめでとう」

「…もしかして忘れてた?」

「今ので思い出したから良いでしょ?」

「まったくルシアは…」



―――――――――――――――――――
アレルヤ誕生日おめでとう。
でも話がめちゃくちゃでごめん!←
ハレルヤはどうしようか迷ったけど、
これまで出てたから良いよ、ね?
ていうか、誕生日関係ないorz
最後に取って付けたようにおめでとう。
こいつ文章力ないんで勘弁を。

*title:確かに恋だった
(2009/2/27)



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