空虚さの隣で






――あぁ、これで何度目だろうか


俺が貴女を想って胸を軋ませるのは…。

貴女の代わりとして宛がわれたのは、

この虚無感を埋めることの無い幼い少年。

変わる事なく流れ行く長い歳月の中で、

俺は幾度と無く己の過ちを悔やみ呪った。


今でもふとした瞬間に思い出す。

例えば彼がみんなにお茶を振る舞う時。

例えば彼が甘いお菓子を薦めて来る時。

そこかしこに残る、貴女という断片。

それは残酷なまでに俺の記憶を刺激する。


もしあの時、俺があんな事をしなければ。

貴女は今でもココに居てくれたのか?


…いや、考えるだけ無駄だ。

何故ならこれは愚かな俺の願望だから。

過ぎた事に、"もし"など存在しない。

今更悔やんだ所で、貴女は二度と…。

この前、彼の人に思い切り怒鳴られた。

お前のそれはただの傲慢だ、と。

まさか彼に言われるとは思ってなかった。


だって、きっと…。


一番貴女を引きずってるのは彼なのに。

貴女を喪った空虚さに囚われて動けない。

あの日から、未だに俺達は逃げ続けてる。

哀しむ事も忘れる事も出来ないまま。


いっそみんな俺に怒りをぶつければ良い。

彼も、彼も、彼女も、彼も、彼女も…。

そうしてみんなが楽になれるのならば、

俺だけ犯した罪の咎を受ければ良いんだ。



あぁ、どうして貴女は消えてしまった?



Dans les prochains de vide
(そう、これは永久に続く罰…)


貴女も彼の心も、今は深い空虚に眠る。



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リゼ