秘密の二人 1

「なんで黙ってなきゃいけないんだ?」

高校の同窓会の知らせが来て、二人で行くことにしたが、絵里奈は俺達が付き合っていることを内緒にしようと言う。
不自然な提案に思わず眉間に力が入る。

「だって、なんか恥ずかしいじゃない。
そんなに親しくない人達もいるだろうし、変にひやかされたりするの嫌だもん。」

高校時代は友達止まりだった俺達。
付き合い初めたのは大学に入ってからだから、同級生達は誰も知らない。

「とりあえず、ただの同僚ってことにしよ?」

そう言われてしまえば頷くしかない。





「絵里奈久しぶり〜。
あ、堂上くん?
二人とも相変わらず仲いいんだ〜。
図書大だっけ?二人が行ったの」

会場に着くや否や:俺達と同じクラスだった女友達に声を掛けられる。

「久しぶり。
そう、今は同じ図書館で働いてるよ。」

やはりただの同僚といった口ぶりだ。

「うわ〜堂上じゃん。
お前すごいいい体してんなぁ。
今何やってんの?」

続いて声を掛けてきたのは木下という男。

俺の頭の中でけたたましく警報音が鳴り響いた。
何しろこの男、高校時代ずっと絵里奈を狙っていた奴なのだから。

「図書館で働いてる。
村上も一緒だ。」

軽く牽制したつもりだったが、俺の言葉など大して響いていない木下の視線は、早速絵里奈に向けられている。

「あぁお前も図書大行ったんだっけ。
堂上は防衛部で絵里奈ちゃんは業務部か。」

馴れ馴れしく絵里奈を呼ぶ声に苛立ちつつ、なんとか平常心を心がける。

「木下くん図書隊のこと詳しいんだね。」

奴の得意気な顔にまた苛立ちが膨れ上がる。

「ああ、知り合いに関西図書基地のお偉いさんがいてね。
絵里奈ちゃんが図書大行くって聞いてから、色々聞いたんだよ。」

「そうなんだ。
関西図書基地には、この間の当麻事件のときにお世話になったんだよ。
ね、堂上くん?」

当麻事件のとき、絵里奈と笠原が無事に帰って来られたのは、関西図書基地の援護があったからだ。

「そうだな。
あの時、俺は何もしてやれなかったから、関西図書基地の方々には感謝してる。」

「あの当麻事件に絵里奈ちゃん関わってたの?!」

俺を無視して、木下が大袈裟な声を上げる。

「当麻先生の亡命を成功させたのは、こいつと俺達の部下だ。」

「えぇっ、そうなんだ!
えっ、でも、絵里奈ちゃんは業務部なんでしょ?」

絵里奈は照れくさそうに俺に視線を向けた。

「村上は俺と同じ特殊部隊員だ。」


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