かぐや女神
  星矢と沙織は城戸邸の庭で、二人きりで中秋の名月を眺めながら月見をしていた。
雲ひとつなく澄みきった昏い夜空には、まん丸い月が煌々とした光を放っている。
 月台として置いた竹製のベンチの真ん中へ、星矢がとって来たすすきを生けた信楽焼の青い長円形の花瓶と、沙織が手作りをした月見団子が二宝へ三角形に盛られてある。その二つを挟む形で二人はベンチに腰を掛けていた。
「いっただきまーっす!」
 と言って一気に丸い塊を口に含んだ星矢は喉へ詰まらせむせた。沙織がクスクスと笑いながら、手を伸ばして彼の背中を叩いてから、月台へ置いてあったポットから緑茶を白地に赤い★マークの付いたマグカップへ入れて手渡した。一気にお茶をごくごくと飲み干すと、星矢は
「ふう」
 と大きな息を吐いた。それからまた団子に手を伸ばし、今度はゆっくりと味わうように食べてから
「うまい!!」
 満面の笑みを作った。
 その様子を微笑みながら見ていた沙織がふいにベンチから立ち上がり、背伸びをするかのように夜空を見上げた。茶色のロングヘアが秋の夜風にたなびく。その様子を見ていた星矢は自分もベンチから立ち上がると、沙織を背後から抱きしめた。
「星矢?」
 彼から伝わる小宇宙から不安を感じ取った沙織は、穏やかなトーンで呼びかけた。
「どうかしたの?」
 すると少年の少女へ回した腕に微かだが力がこもった。
 「こうしてねえと、このままかぐや姫みたいに、天界へ帰っちまいそうで」
彼の言葉に沙織は軽く返した。
「バカ、ね」
 そして沙織は心の中でそっと呟いた。
(貴方がいるから私は地上―ここ―にいるのよ)               ―End.―
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