夢魔の爪
そこは暗く湿った牢の中である。
今は何月なのか何日なのか何時なのかさえ分からない。
女が一人、胎内の様な場所で夢想という名の自慰に耽っている。
「龍……峰……」
甘く切ない声が女~パラドクス~の唇から洩れる。右手が己の白い豊満な胸に左手が水色の豊かに茂る叢へ伸びている。
「憎いわ……」
だが、それは愛しているという対義語でしかないのだが、何度も「憎い」「憎い」と呟きつつ、パラドクスは己の身体を弄ってゆく。

―少年を、地面へ押し付けた時にかかった甘い吐息・抱き付いた時の暖かな温もり・頬へキスをした時の柔らかな感触―

パラドクスが己の手と共に少年の記憶を辿る。最初は父親と瓜二つだと感じた。だが、接するうちに少年は、父親とは違う肉体と人格を持った人間であると気付いた。父親の時とはまた違う感情で、パラドクスは龍峰に惹かれた。
「龍……峰……」
次第に女の動きが強く乱暴になっていく。あの心根が優しい坊やは、情交で女性の肉体を手荒く扱うような真似はしないだろう、とぼんやり頭の片隅でパラドクスは想う。
「戦いの時は、あんなに暴れん坊だったくせに」
パラドクスが小さくクスリと笑った。
あの時から見えない小さな龍の爪が、パラドクスの精神と肉体とへ傷を付けた。
「つっ……」
パラドクスの股間から、透明な滴がしたたり落ち、黒い地面へと吸収された。
「うっ……」
やがてパラドクスがエクスタシーへ達した。そして水色の長い髪をなびかせ臥し、ピクリとも動かなくなり、その身体を闇が静かに覆っていった。―結束―
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リゼ