徒歩∞分

中学ん時からずっと片思いしてるやつの家にきた。あの頃の俺からしてみればかなりの進歩。あの頃の俺といえば、ひたすらアイツを笑わせて喜んでた。アイツが笑うためなら自分だって犠牲にしてきたんだ。高い場所から落ちそうになっても、アイツの友達に嫌われても、俺は頑張ったんだ。

アイツがコーヒーを淹れにキッチンへ行く。いつかこれが毎日の風景になって、飽きるほどみれたらななんて。ああどうかしてるよ。承知の上さ。
ふとテーブルの上に一枚の紙をみつけた。最近視力が落ちてきた俺は近くまで顔を寄せないとよくみえない。

―駅から徒歩5分


マンションの広告。なんで広告がテーブルの上に広げて置いてあるんだろう。気になって全体を見渡すと左下の部分に赤く丸がつけてあった。円の中の数字を見た途端俺の中にある言葉が思い浮かぶ。…引越し?まさか、そんな。
やめてくれよ。どこにもいかないでくれよ。やっとここまできたんだ。あと一息なんだ。でもその一息はもしかしたら凄く疲れるものかもしれないけど、とにかくあともう一息。あと一息なんだ!

どこにも行かないでくれ!誰のもとにも行かないでくれ!

「っ!?」


頬には目から流れた液体が孤独に顎まで伝う
そして何故か口元は酷くつりあがっていたんだ

「誰、あんた…もしかしてあのストーカ…!」









そこから先は記憶が無いや









END

(いかないでくれ、どこにも)






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リゼ