自転車を駐輪場に置いて、そこから校門まで走って、校舎も走って……
「はーっはーっ…はーっ!疲れたっ!!」
「大丈夫か?」
「げふっ…ふむ!!」
「もうちょっと頑張れ美紀、職員室まで案内すっから」
「うん…ってちょっとなにその突然名前呼ぶドッキリ、すっごい心臓に悪いよ」
「さっき生徒手帳みたからな」
「いやでもいきなり名前っていうのは、、」
「ん?ああ、自分だけ名前で呼ばれてるのもアレだし」
「……私まだ1度も名前で呼んだこと無いんだけど」
・・・。
「……そうだっけ?あそっかー♪あははまあいいじゃんホラッ行くぞー美紀ー!」
「なにあれ超うぜえ(^ω^)」
つか革靴新品で超痛い!
っ…!!
「は、初めまして、柳坂美紀です、よろしくお願いしまっ…プッ」
職員室に案内され担任の先生に教室まで連れてこられ現在に至る。
千鴇君と同じクラスという事は伝えられていたが、まさかそのクラスが…
必死に笑いを堪えた今の私の顔は、きっと、いや絶対みんなにおかしな子だと思われるような顔だろう。(まあ元からおかしい顔してるけど!)
「おっ、あれだよあれ、」
「あいつが…」
「何か堪えているようですが、どうしたんでしょう?」
おいレーザー…、
どうしたんでしょうじゃないよ、あんた達のせいだよ…!
おっさんと紳士が制服着て木の椅子に座ってたら誰だって吹くわ!
なんかもう制服がスーツにみえるよ!
保護者かお前ら!
誰だよここのブラウス作ったの!←失礼
そんな事を考えながら彼らをガン見していたら目が合いそうになって、私はヤベッ!っと本能的に下を向いた。
「じゃあ柳坂さんの席は…」
「はいはいセンセ!ここ空いてます!」
先生が振った台詞に、千鴇君が叫ぶ。
え?でもその席…
「なにを言ってるんだお前は!?ここは俺が座っ「あの件飲んでくれるって言ったじゃん…」
「それとこれは全く話が…」
「ダメ?」
キャア、と女子の黄色い悲鳴が聞こえる
その後すぐ、ふぅ、とため息をつきながら、おっさ…真田は後ろの席に荷物移動し始めた。
いやおまっ、ダメ?って何だよ、ダメ?って。女の子が男にブランド品をねだるような感じに言ってんじゃないよ。
っていうか、あの真田が千鴇君には逆らえないんだ…
あの件とか、意味深だなあ…
「柳坂さん、そろそろ席について?」
「へ?あ、すいません」
その光景をついボアっと見てしまった私は先生に声をかけられハッとして、いそいそと机の合間を縫って真田が座っていた席に向かう。
なんかチラッと女の子の厳しい視線が当たるような当たらないような…いや!ただの自意識過剰だな!うん、、そうであってくれ、、
「さっきぶりだな」
席に座った途端、私の右隣に座った千鴇君に話しかけられる。
「そうですねー…つかなんでこの席?若干お父様の温もりが残ってるんだけど…」
「あー、真田の後ろじゃ多分黒板見えないし、俺と近い方がなにかと便利でしょ?」
「ま、まあ確かに…けど、なにかとってなんだなにかとって」
「んまあよろしくな!」
「う、うん」
確かに知り合いがいた方が気が楽かもね。
彼の何気ない気遣いにちょっと感謝した。
「貴女が柳坂美紀さんですね、話は畠見くんからききました」
「うわっ!」
左隣からとってもいい声が聞こえてきて、バッとそちらを見る。
びっくりしたじゃないかレーザー眼鏡くん!!!
「私は柳生比呂士といいます。よろしくお願いしますね」
「しっ…、こちらこそ!」
ヤバイ!つい、知ってます!って叫びそうになった……!いやあでも近くでみるとやっぱりカッコいいね!
「おいおい一目惚れ?確かにやぎゅーはイケメンだもんな」
「うんそうだよ」
「薄坂さん!?」
「ホラそこ静かにしなさい」
「すっ、すみません」
いけない!初日で目立ってはならない…!
私はスッと黙り、それと同時にまだ挨拶できていない人物を思い出した。
先生や周りにバレないようにそっと後ろを振り向くと、険しい顔をしたおじs…テニス部副部長がそこにいた。
うわ、っていうか真田が後ろの席って…私下手な事出来ないなあ…←
「さ、真田君…だよね?ごめんね移動してもらっちゃって…これからよろしくね?」
「う、うむ…」
私に話しかけられると少し狼狽た様子で、品定めをするような目線でこちらを見つめてくる。
えっめっちゃ存在を疑われてる…そんな気がする…
ふと不安になって隣の千鴇君を見ると、美形顔を少し崩してニヤニヤしてた。
やっぱうぜえ(^∀^)
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