9/貴方の場所



「柳坂」
「…にお、」
「……そんなに落ち込むな」

千鴇くんが連れ去られて、しょぼくれてる私を、さっき突き飛ばされて辛いはずの仁王が近くにきて慰めてくれた


くそう、ちゃんとありがとうって言えなかった…


「どうしよう…」
「どうもしなくても、ちーちゃんは死にはせんよ」
「でも…立海に必要なのは千鴇くんだよ」

きっと跡部は、千鴇くんをずっと自分の側に置いておこうとするに違いない。
でも千鴇くんは立海の生徒なわけだし。
何より立海テニス部のみんなから必要とされてる存在なんだ。

「それにこれはあいつらの問題じゃ。俺達が手ェだせる事じゃないぜよ」
「そんな…でも、」
「…前にもあったんじゃ」
「…え?」

仁王はリビングにあるテーブルの椅子に腰掛け、脚を組んでゆっくり俯いた。

私はそんな仁王に『動作がいちいちエロい、エロすぎる!』と過剰反応しつつ、仁王が次に発する言葉を待った。


「あいつが転校してきたばっかの時じゃった。
千鴇がマネをやるって決まったことでテニス部で集まってミーティングしちょった時、いきなり跡部が部室に現れて、千鴇をみつけるなり襟元掴んで大声で叫んじょった。

『何故氷帝を選ばなかった』ってな」
「あ…」

そういえば千鴇くん、前は青学にいたって言ってたけど…
その時から跡部との交際は始まっていたんだ。

「跡部はそのまま千鴇を連れて帰り、千鴇はそれから一週間近く学校に来んかった。」
「え…!?どうして、誰も追わなかったの!?」
「勿論誰もが追った。それがあいつの魅力じゃ。だが誰も千鴇には会えんかった。“跡部”の力での」

跡部の………
そんなにしてまで一週間も、千鴇くんは一体どんな事をされたんだろう………

…ちょっ、そこ変な妄想してるとか言わない


「コ、コホン……じ、じゃあどうやって、」

「幸村が説得した」


…………あぁー。






「ところで、」
「?」
「おまえは今までずっと、千鴇の見様見真似でマネージャーをやってきた。…千鴇がいない今、今度はおまえの番じゃ」
「…!」

そうだ、千鴇くんが帰ってくるまではあたしが1人でマネを…
でも、まだまだわからない事だらけすぎる。

「大丈夫じゃ。なんかあったら俺らに聞いてくれればいい」
「うん…」




とりあえず返事をしたけど、私の頭の中はまだ混乱していた。

一応私達の正体を知っている仁王がいるとしても、同じ境遇で、今までずっと一緒にいた人がいきなりいなくなるなんて…


「外、暗くなってきたね…」
「…そうじゃな…飯、食うか」
「…うん。」




不安と共に、夜闇が迫る。








(12/23)