13/空白の時間だけは





「…っつーわけだ」
「え、ちょ…まじでか仁王…」
「俺はすべて受け入れるつもりじゃからの」
「…未来が、分かってても?」
「……」

賑やかなゲームセンターの前の静かな空間。

仁王は千鴇くんや私が何処から来たか、自分が暮らす世界とはどんなものかを唯一知る人物。

それは私が数分前に知った事実。


「まあそんな深刻な顔しなさんな」
「でも…」

自分の将来、しかも学校生活においての殆どを費やしてきた部活の大会で、いずれ、自分がよくない結果になるって…
それに、仁王は一番辛いはずなのに…

「どっかの誰かが俺の運命を決めとるいうんは悔しいけん、じゃがそいつが筆握っとらん時は、俺なりに楽しめばいい」
「!…そうだよね」

納得出来たのは、そう言った仁王の顔は生き生きとしていたから。
漫画には描かれていない素顔の物語を、今目の前で私は見ているのだ。
見守らねらばならない、そう強く思えた気がした。

それにしても…

「いやあやっぱり本物は良い顔してるねー…」
「なんか変態っぽいぞ美紀」
「ひっでえ!ホントの事言うなよ!」ゲームセンターの中に入ってく千鴇くんを追いかける。
ニオは先にブンちゃん達を捜しにいったらしい。

「うそうそ。仁王がこの話であんなに喋ったの初めてだからさ」
「…ふーん?」
「千鴇ーっ!柳坂ーっ!」
「ほら早く来て先輩!」

遠くから二つの元気な声がきこえる。

「やったな美紀」
「え?なにが…」

みんながいるトコをみると…

「プリクラ、家宝だろ」
「流石千鴇さま分かってらっしゃる!」

私はニヤn…にっこり笑ってみんなの元へ行った。













ガチャ

「はーっ、なんかすっごく長かった…」
「よいしょっ、荷物ここ置いとくな」
「あ、ありがとー」

家についてすぐ部屋のベッドにダイブした。
「パンツ見えんぞ」とかなんとか聞こえたけどもう何も気にしない。疲れた。寝たい。でも寝たら朝がくる。夜はゆっくりしたい。
ぼーっとした脳内で矛盾が繰り返されている。

とりあえず、そうだ、私の荷物片付けないと。
覚悟を決めてバッと起き上がると、家の隅にある段ボールを開いて、その前に座り込む。
中には本当に衣服類しか入ってなくて、ゲームや漫画、CDはすべてあっち側らしい。
…ん?

「千鴇くん千鴇くん」
「なんだー?」
「私達が元いた世界はどうなっちゃってるの?」

夕飯の支度をしていた千鴇くんがエプロンをつけながら、キッチンから顔を覗かせる。
…なんだかんだ彼も操作したとはいえ、顔面が良すぎるせいで、ちょっと不覚にもキュンとしてしまう。


「さぁなー、俺もこっち飛ばされただけだからわかんねぇや」
「そ、そっか…」

私、行方不明とかになってないかな…
もしなってたとしたら、どれ位の人が心配してくれるだろう…

「あんま変な事考えんな」
「え?」
「状況がどうであろうと俺達が生きてる事にかわりはねェ。こうやって喋って、床に足ついて、色んな人と出会ってきたんだ。だから元の世界がどうとか、どーでもいいだろ?」
「う、うん」

確かにそうだけど、なんだか千鴇くんは元の世界について話したがらないような感じがする。
さっきニオと話してた時も、ずっと黙ってたし…

そんな考え事をしつつ、荷物の片付けをしていたらあっという間に時間が経っていた。


「おーい!夕飯出来たぞ」
「あ!うん…って、うわあ、ハンバーグじゃん美味しそう!」


まあ、あまり話したくない事を話させるのは可哀相だし失礼だよね。

「ここがリビングな」
「広っ」「そうか?まあまあだろ」
「いやあマンションにしては大きいよ…!」

いつまでいれるかもわからないし、

「いただきまーす」
「おいっお前手ェ洗ったか!?」

ここでの生活を思いっきり楽しまなきゃ損だよね。



あっさっきのプリ、あとで何処かに貼っておこうっと!
美味しいハンバーグをぺろりと平らげて、私はとにかくこれからの楽しい事を考える事にした。














リゼ