〜♪
「んー………まーけーてーはーならーぬー…」
例の魔界交信曲で目覚めた私は歌を呟きながら手探りで携帯を探す。
某テニス漫画を好きになってから、毎朝目覚ましの音楽はこれにしていた。 飛び起きなければ二度と起き上がれなくなるんじゃないか…!!という暗示が何故か自分にかかるからである。
…って、ん?あれ?なんだか枕ジャリジャリしてる…?
確か私の枕は低反発だったはず…
ぶわっ
「うわっ寒っ!!ちょっと布団返してお母さ…」
ブルブルと震えながらも起き上がって数秒
目の前にいるみたこともない人間から目が放せなくなる
「あ…あんた誰ですか!?」
「ん?この家の住人」
「この家…って、えっちょっココ何処ォ!?」
すぐに辺りを見回すと
馴染みのないベッド、見たことのない家具に囲まれていて
それに目の前には…
「俺はハタミセントキ。よろしく」
……えっ。誰?
「つまり……ってわけ」
「えっ…なっなんで、ちょっとまって、ホント何…わけわかんない」
ひとまずベッドから起き上がった私は、髪はバサバサ顔は酷い有様の状態でありながらも、同居人と名乗る男から情報を聞き出す事以外に選択肢はなかった。
が…
「話聞いてたか?まあ…とりあえず、お前は今日からこの世界の学校に通わなきゃなんねえ。これ制服ね、あーあと洗面台はこの部屋出て左から…」
全く知らない部屋で、全く知らない人間から話される言葉ほど信用ならないものはなく…
「は?ま、まって、突然そんな事言われても…」
めちゃくちゃ怪しい!って顔で男を見つめると、少し億劫そうな顔をして男はガサゴソとポケットからあるものを取り出した。
「あー…じゃあ単刀直入に言う!その方がお前には良いだろ。…お前はな、テニスの王子様っつー漫画の世界に飛ばされたんだよ」
……………は。
いやいや〜まさかそんな!地球がひっくり返ったってそんな事起こるわけ…え???????
「えっと、言ってる意味が良く分からないんですが〜〜〜〜…え〜?っと???」
と言って彼が先ほど取り出したものを見つめると、ケータイの写真に見た事のあるイケメン達が、目の前にいる男と一緒に写っていた。
えっ…???コスプレ???
いや…それにしては出来すぎてる…
というより、何故か分からないけど私の頭の中では彼等が本物であるという気がしてならなかったのである。
な、な、なんてことに…!!!!!
「いやだから、お前の世界で漫画になってる…「わかる、テニプリわかる、けど、嘘、やだ、えっ、夢じゃないよね、ちょっとつねってみるね…痛っ!、夢じゃない!!うっそーーー!?!?!?」
「すげーテンション上がってんな…とりあえず準備しろな、」
と言って男は見知らぬクローゼットから学校の制服を取り出し、パニック状態の私に平然とした顔でそれを渡す。
「あっどうも…って、えっやばい!!嘘ついてないよね!?つか誰だか知らないけど!!でもだって…あーっ!!立っっ海!!!この制服立海じゃんっ!!!」
「置いてくぞー」
「あっすみませんっ今準備しまっす!」
えっなんだアイツ!めっちゃドライだな!
彼も立海に通う生徒なのかな?
それにしては素性を分かりすぎてるというか、慣れてる感じだったけど…
「んーまあいっか!とりあえず準備準備!」
とっとと部屋から出てってしまう男を追いかけるべく、私はベッドから立ち上がって大きく背伸びした。
ふと見つけた窓から見える景色は普通の風景。
ただ違うのは、彼曰く、私の世界には存在しない人達がいるって事だけの世界。
「なんだかどうなっちゃってんのか全く分からないけど、全部実際この目で確かめてみないと、分からないもんね!」
1人がらんとした空間に不安と期待の入り混ざった言葉を放ち、私は扉を開けた。
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