アナログ頭脳を撃て



「いってきまーす」

一人暮らしなんて成人してからの事だと思ってた。家事もろくに出来ないあたしがいきなりひとりぼっちになったのはつい先日の事。息継ぎする暇もなく日々は過ぎていく。空っぽの家も空っぽの生活も慣れるしかない。
理由はそんなに深刻じゃない。お父さんの突然の海外出張。お母さんはずっと家にいるもんだと思ってたけど、お母さんもいなくなった。

『美紀、おじいちゃんの容態が悪くなったからしばらく実家に行くわ。あなたはどうする?』
『え…あたしは学校があるから…』
『そう…一人で大丈夫?』
『う…うん、』

とは言ったものの、一人暮らし開始直後に家はとんでもない事になっていた。
ご飯は勿論買ってきたものだし、洗濯物もお母さんが書いたメモをみながらでやっと覚えてきたところ。家庭科の成績は普通だったけど、知識じゃ実践には向かないのがよくわかった。


「ちわー」

塾のドアをもたれかかるように押す。ちょっと眩んだから疲れてるのかも。

「美紀ちゃんこんばんは、ちょっと疲れ気味?大丈夫かい?」
「あー…まあ」
「そう?あ、実は今日から先生変わります」

いきなりですね塾長

「へぇ、どんな人です?」
「坂田先生といいます」
「坂田かあー、良い名前ですね(銀時的な意味で」


「そうかい?あ、授業はじまるから席着いて!」
「はーい」

薄い板で区切られた、机と二つのイスの並び。集中して勉強出来るようにと選んだ個別指導塾は意外と開放的な場所だった。もっと狭くて、詰め込まれるような場所だと思ってた。今思えばやっぱりここで良かったなと思う。


「今日からお前の担当になる坂田でーす。教科は国語でいいよな?」
「はっ…えーー!?」


…やっぱり、良かったなと思う。



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初回は地味に説明ですがどんどんギャグになりますから安心して下さい←





リゼ