「雨…凄いね」
古びた家屋の窓から、外を眺める少女が小さく呟いた。
その後ろから歩み寄る銀髪の男…銀時は、自らの右肩を左手で掴みながら口を開いた。
「こんなんになるなら新八の言う事聞いとくんだったな…」
夕方、いつものように二人でぶらぶらと町中を歩いていた。
夜には台風がくるのに呑気だと新八君に言われたけど、銀さんは「ジャンプ買わねーと今週が始まらねーんだよ」なんて言っちゃって。
しかし、幸か不幸か…帰り道に偶然、最近巷で有名な辻斬が若い浪士を襲っている所を目撃してしまったのだ。
普通の人間なら怖くて逃げ出してしまうだろう。
だけど彼は侍だから。
自分を裏切るような事はしない人だから。
「あの男の人…無事に逃げられたかな」
「さぁな…つーかよ、俺と一緒の時に他の男の話するなんざ、良い度胸してんなお前…っ!」
「!!大丈夫っ?傷口、痛むの…?」
苦しそうな表情の銀時。
しかし彼は、必死に笑顔を作って、自分を心配する彼女の頭を撫でてやる。「大丈夫…凛を守るのが俺の仕事なんだからな。」
「……なに馬鹿な事、言ってんの…」
貴方の傷は痛むけど
もう少しこのままでいたい。
そう考えてしまう私は、やっぱり彼のこころを傷つけるのでしょうか。
「ごめんね…銀さん」
彼女の言葉は外の音によって、誰の耳にも届く事は無かった。
(銀さんはただ貴女を悲しませたく無いだけ。)
|