「…馬鹿か貴様」
ああ馬鹿だよ。
「もう一度言ってやろうか?俺には近寄るな。」
「嫌だ。」
あいつらがくるまでは絶対離れたくない。
「はぁ…凛、言う事聞かないとお仕置するぞ」
「…小太郎こそ馬鹿なんじゃない?」
今の私にそんな事言うなんて。
「なぜだ?」
でも理由は言えない。
『構ってもらえるのが嬉しいからだよ。』
ひねくれ者の口からそんな言葉は出ないから。
「桂ァァァ!!今度こそ捕まえまさァ!!」
「…早く逃げなよ」
一緒に逃げようとか
運命を共にしたいとか
私も協力するよとか
言いたいのに
言いたいのに…
「うむ。では…元気でな」
「うん…」
『ずっと一緒にいようね』
いつの日か交わした約束も
今はもう無いものとなった
『二人が会うのは危険だ。』
貴方の言葉が胸にささる…
「おいそこの女!今ここらで指名手配の桂をみなかったか!?」
私は帽子を深く被り、声のトーンを低くして答えた。
「桂…?すみません、知りません。」
「そうか、分かった!」
彼を囮としてしまった私は、ただ祈るしか無いのでしょう。
罪深き私には祈る神などいないかもしれないけど
それでも耳をかたむけてくださるのならば
ひたすら祈る
どうかご無事で…
誰もいなくなった表の通りに出る。
塀に貼られた小太郎の写真の横には、私の写真に名前…下には高額な賞金が書かれていた。
「よォ、高杉凛さん」
振り返るとそこには、黒い隊服で身を包んだ男達が私を囲んでいた…。
(高杉晋助の妹。)
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