次はいつになったら会えるの。そう質問したら彼は「気の向くままに会いに行くさ」と答えた。だったら毎日会いにきてくれたって、なんて言えるはずも無く、気付いたら半年が経っていた。半年前の「結婚してくれ」はなんだったの。最後に一緒に観た月9に感動して呟いただけだったの。まああたしも感動したけど。そういえば婚約指輪も貰っていないような気がするし。絶対言い逃げなんて許さないんだから。
ぶつぶつと、俯きながら歩いていると(不審者だよね、これ
「!?」
右腕が引っ張られて痛い!思った時には辺りは暗い。
「ちょっ…離してよ!…って…晋助!?」
「久方振りだなァ、凛」
晋助だ!晋助が帰ってきた!
「なんだ…!ビックリした…脅かさないでよ…」
心臓がバクバクする。嬉しさで泣きたくなるのを我慢するのに必死だった。握り締められた右腕からその震えが伝わるのが怖くて、顔を伏せてしまう。
「ふっ、間違ってもテメーを路地裏に引っ張って襲う男なんざァこの辺にはいるめーよ」
あ、でた。晋助印のS発言。少し楽しい気分になった。
「なにそれ、嫌味ですか。嫌味なんですか。」
すぐそうやって人をおちょくるのが特技だったわね。そう言って晋助の頭をはたこうとすると、左手にあったはずのぬくもりが無かった。
「あれ…手袋どこやったっけ?」
必死にポケットの中や周辺を探す私をみながら、喉でくつくつ笑う晋助をチラリとみて、確信を得る。
「晋助…私の手袋」
キッと晋助の顔を睨むと、彼は「探し物はこれか?」と言いながら見慣れた手袋を私の前に出す。
「そう!それ。さあ返して?」
「いやだ」
「何言ってんの。返してってば」
「キスしろ」
「…したら返してくれるの?」
「早く」
「…わ、分かったってば…」
い、今だけだよ!今だけ!だってかじかんだ左手が悲鳴をあげてるんだもの!仕方ないわ!
「あ…手袋」
「お前に嘘はつかねェよ」
優しい瞳の彼に、思わずにんまりとしてしまう。
「あ、ありがと…ん?なんか当たってんだけど…」
なにやら左手の一部分に違和感あり。透かさず手袋を取ってみると、銀色に輝く輪。
「あ…」
「意外に似合うじゃねェか、エンゲージリング。」
「綺麗…たっ高く無かった?」
「お前はすぐ金だな…。そういうのは気にしちゃいけねェよ」
「そうかな…そうだね!」
どうしよう。コイツこんな事する人だったっけ。思わず笑っちゃう。ドキドキが止まらない。嬉しさが止まらない。
「ありがとう…晋助…」
少し冷えてきた身体は、また体温をあげつつあった。
END
(この指輪は夢を叶えるその日まで、)
|