8.謎 唄



人口の光と月明りが主役の時間
屯所内は食事の準備をする者や稽古の汗を流す者で賑わう
隊士達にとっては至福の時間だ


そんな時にも部屋に籠り、頭を掻きながら筆をすべらせる男がいた


「副長大丈夫ですか?ここんとこ全然寝てないじゃないっすか…」
「あ?ああ…その書類そこ置いといてくれ」
「あんま無理なさらないで下さいよ、副長が倒れたら屯所中書類まみれですよ」
「それだけは阻止しねぇとな」

苦笑紛れの会話は数分にも満たず
敬語の男は眠い目を擦りながら部屋を後にする
残された男は一人机に向かい紙一枚一枚と睨めっこを続けている


「あーくそ…アイツが入っても対して減らねぇじゃねェか…」

武鳶柊一。
ふざけた見た目のくせに態度は優等生ってカンジで、あまり好かねェ男だ。
だからといってその逆なら好きだというわけでもないが。

最初は謎に包まれた男だったが、ただの一隊士としてそんなに気になるわけじゃ無かった。
だが
沖田以上の実力を秘めていると知ってから急に気になりはじめた。

何者だ、アイツ…


「手が止まってますよ副長」
「…あ」

…噂をすればってヤツか?いや、噂じゃねェけど…


肩でくいっと襖を開ける仕草から、両手に何かを抱えてるようにみえる。
「良かったらお手伝いしますよ、俺今仕事無いんで」
「悪ィが、これは全部俺か近藤さんが目を通さなきゃならねェ書類でな。お前が手出し出来るモンじゃねェんだ。」
「それは残念です」

「で、何の用だ?」

「副長が部屋に籠って仕事をしていらっしゃると聞いたので、軽食を」

そう言うと武鳶は、机の横におにぎりの乗った皿と茶が乗った、大きなおぼんを置いた。

「今日の夕飯は鮭でしたので、おにぎりの中にはそれをいれてみたのですが…あ、これマヨネーズです」
「おー…、サンキューな」

…なんだ
あまり人と接しないようで、過去のトラウマに囚われてるっつーから、どちらかというと暗く冷たいイメージだったのに…



「では、これで」

「…おい、待て」


ますます気になるじゃねぇか、









「くそ…見つからねぇ」

屯所の一角にある資料室。
過去の事件や指名手配犯の顔写真等の資料がある場所だ。


「武鳶柊一…何者だ、テメェ…」


普段なら愛用のアイマスクをかけて寝ている男がガリ勉のように資料を漁っていた



8-END


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リゼ