1.光 闇



闇の中逃げ惑う男達
その流れに逆らい
姿を現す懐しき面影


『…っ晋助…』
『久しぶりだなァ、柊…』

闇に光る刃が目先に伸びてくる
この場所から抜け出そうとして一歩、また一歩と後ずされば
逃がさないと言わんばかりに銀色の先端が追いかけてくる
何度か服の切れる感覚がしたが気にしてはいられなかった


『――…っ!』

背には冷たい壁
気がつけば俺はまた闇に戻されていた

『何処に行く気だ?』

アイツの整った顔がすぐ近くにある
だが今目の前にいるアイツは俺の知っているアイツじゃない

『どうした晋す…』
『どうしたって、どうもしねーよ』

違う。
明らかにおかしい。

『フッ…今日は綺麗な満月だなァ』

―満月。

『あんなに綺麗な満月は闇からみねェと勿体ねェ…なァ、柊?』
『あ、ああ…』

そうだあの夜は
満月だったか

『おい…もう忘れろ、あの事は』
『…何をどうしろだと?』

晋助の顔が少しひきつる

『俺の…俺の兄さんの事はもういい…だから、』

そう言って俺は追い詰められた壁から逃げるため、足を横にずらす



『記憶の問題じゃねェ…身体に染みついちまってんだよ、

お前の兄貴を刺した感覚が。』


目を見開き壁に突き刺された刃
頬には掠り傷

『…っ、ふ』
『……煙草の味まで覚えちまって…』

不意に塞がれた唇が熱い
だが冷えた身体はその熱をさらに求めてしまうから

怖い






『…お前の中から、お前の兄貴の影も、その煙草の匂いも、全て奪って捨ててやりてーよ』

力が抜けて地面に座り込んでしまった俺を見下げる晋助がため息をつくように囁く。

『…それは出来ない』
『クク…だろーな』

俺から視線を逸し呟いたその目は、次に満月をみつめていた。

『…今宵は残酷な望月だ』

そう言うと晋助は刀を鞘に納め、俺の前から姿を消した。

『しん…すけ、…』

―――俺はそのまま深い眠りについた。




―ないよ

――いけないよ





外へ出ては、いけないよ

柊一







「!っ…兄ちゃっ…」

目が覚めたのは空に黒と白が混じりはじめた頃だった。


「まぶし…」


俺は自然と光が差し込む方へと歩みはじめた。
また戻ってくるかもしれない、黒の世界と別れを告げて。


「晋助…必ずお前の…野望を…」


俺が、









1-END






リゼ