おめでとう!
「おめでとう!」


今日はいつもとちょっと違う日なのです。
ほんの少しの違いではあるけれど、大事にしたいと思うのです。

だから彼は今日はお休みをもらって、朝からキッチンに立っていました。
オーブンの中からは、ケーキの焼ける香ばしい匂い。
ケーキが焼けたら、次はミートローフを焼かなくては。
野菜たっぷりのトマトシチューもあとはこのままじっくり煮込むだけ。コールスローサラダはもう冷蔵庫で冷えているし・・・。
時間は、もうそろそろ夕方になろうかというところ。
よし、ラストスパート。

自然にますます気合いが入ります。

ふと、KKは、神様の言葉を思い出していました。

「KK!来週の水曜日は俺の誕生日だから!」
いきなり言われて目を丸くしたKKに神様は続けて、
「俺、神様だから誕生日なんて知らねえけど、KKに初めて出会った日を俺の誕生日にしたいんだ」
と、満面の笑顔で言ったのでした。
これにはKKも面食らいました。
今までずっと一緒にいて、今さら誕生日もなにもないんじゃないか。

だけど、いざその日を迎えてみると、彼は上司にかけあってまで仕事を休み、こうしていそいそとキッチンに向かっているのです。
彼は自嘲しました。
どうして俺はあいつに甘いのだろう、と。
でも、その答えを彼はとっくに自身でわかっているのです。

ピー、という音がして、オーブンの換気ランプが点滅を始めました。
ミートローフが出来たみたいです。
オーブンから取り出して、少し冷ましてから型から外してやれば、綺麗に焼けた肉の固まりが出てきました。
それを薄く切って、切り口を綺麗に見せるようにお皿に盛って、周りに野菜を飾って・・・。

さて、これで準備完了。

テーブルの上には、彼が丹精こめた力作ばかりが並びました。
後で神様と一緒にデコレーションするので、あえてなにも飾らずにクリームを塗っただけのケーキがいい味を出しているような気がします。
さて、あとは。

「KKただいま!」

おや、タイミングよく主賓のお帰りです。

KKはいつもの通り彼を部屋に入れ、早く席に着けと促しました。
神様は席に着き、そしてもう既にテーブルの上のご馳走に目を輝かせています。
KKは少ししどろもどろに言いました。

「誕生日、おめでとう」

言って、彼はちょっと赤面しました。
こんなこと、自分の柄ではないなと思うからです。

少し彼が目を伏せた次の瞬間、いつの間にか向かいに座っていた神様が自分の隣に立っていました。
「サンキュー、KK。大好き」
ぐいと引き寄せられて、食前にしては甘すぎる言葉と口づけがお返しとしてKKにプレゼントされました。

いつもなら、食前のキスは適当に暴れて無理に引き剥がしてしまうのですが・・・
彼はそれをしませんでした。

今日は特別です。
だって、今日は神様の誕生日なのですから。
- 8 -
[*前へ] [#次へ]
戻る
リゼ