you are child
「知らない人、変な人に付いていっちゃいけません、」って、よく言われるんだ。

だって、僕は小さいから。

僕は神様の影で、何年も何年も存在していて、それなりに色んなこと知ってるんだけど、見た目は小さいから、まだ子供、なんだって。
KKが言ってた。
じゃあ、知らない人に付いていったらどうなるの?って聞いたら、KKはちょっと考えながら答えてくれた。
僕はよく分からない言葉もあったんだけど、KKが言うには、知らない人についてい行っちゃったら、付いていったところで、とってもひどいことをされちゃうんだって。
イタズラとかされちゃうんだって。
イタズラ、ってなあに?って聞いたら、それは答えてくれなかったんだけど。

ともかく、そのとき僕は思ったんだ。
絶対、知らない人、変な人にはついていかないぞ、ってね。

だって、僕は、もう子供じゃないもん。
「でね、KKからそんなこと言われたんだよー」
僕は、曲を作る用の小さなピアノの前でうんうんうなっているおじちゃんの後ろから、思いっきり抱きついて言った。
おじちゃんは、ちょっと僕を振りほどきそうな仕草をしていたんだけど、僕がぎゅーっと力を入れてたら、すぐにあきらめたみたいだった。
「まあ・・最近はガキ相手の犯罪が増えてるらしいからな」
ピアノの蓋をしめて、おじちゃんは頭をかきながら小さくため息をついた。
「いくらお前でも、用心するに越したことはないだろ」
「おじちゃん、僕のこと心配してくれるの?」
「まあ、一応は。」
「わー、おじちゃん優しい!大好きー!」
耳元でそう言うと、おじちゃんはちょっとだけほっぺたを赤くした。
照れてる。
可愛いー。
「あ、そいういえば、おじちゃん。実は僕ね、曲を作るのにいい場所を知ってるんだよ」
いい場所?とすかさず聞き返してきたおじちゃんの手を、僕はぎゅっとにぎった。
「うん!静かでね、誰もいなくてね、ちょっと暗いの。だから、ゆっくり曲を作るには、きっといいよ」
「そりゃ、いいな。」
話がうまくいきすぎて、思わず笑っちゃった。
曲、という言葉を言えば、おじちゃんを話に乗せるのなんて簡単だ。
だって、おじちゃんは音楽が大好きだから。なによりも。
「じゃあ、早速案内するね!」
そうと決まれば、と、僕はひょいとおじちゃんの背中からおりて、持ってきたリュックを体の中から引っ張り出した。
「なにやってんだ?」
「僕も、おじちゃんと一緒に行くの!曲作ってるときには静かにしてるからー」
いいでしょ、いいでしょ、と駄々をこねると、おじちゃんはしばらく困った顔をした後、仕方ねえな、と一言だけ言った。

・・・あれえ、本当に、こんなに簡単に、ついてっちゃう約束をしちゃうんだ?

KK、あのね、僕だけじゃなくてね、おじちゃんも、とっても子供だよ。

まあ、僕は知らない人でも、変な人でもないか。

僕は、リュックの中身をもう一度確認した。

折り紙と、はさみと、花火と、ビニールのひもと、ガムテープ。
それから、お昼寝のために、KKがずっと前に使ってた、よく眠れるお薬も忘れずに。
うん、全部入ってる。
「おい、そんな大荷物で行くのか?」
「うん!向こうに着いたらね、おじちゃんにイタズラするの!」
「お前・・・さっき静かにしてるって言ってただろ」
「大丈夫だよ!おじちゃんが曲を作ってるときは、邪魔しないもん」
「・・本当だろうな?」
「うん、ほんとー!」


うん、本当に、僕、おじちゃんが曲を作っている間だけ、静かにしているよ。

なんにも手を出さないよ。


曲がちゃんと作れるなら、の話だけど。
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