そっくりさん
この世の中には、不思議なことがいっぱいあるんだ。
そう、大好きな神様が言っていたことを、ハテナは思い出していた。 

目の前にいるのは、自分と同じ精神だけの存在。
実体を持たない、ぼんやりした存在。
だけどその人は、確かに自分が知っている人そのものだった。

「おじちゃん、スモークおじちゃんに似てるんだね」
その人は、ぎょっとしたようにハテナを見た。
なにか、信じられないものをみた、という風だった。 

「お前、俺が見えるのか。…まあ、お前も見たところ俺と同じみたいだから不思議じゃないか…。それより、あいつを知ってるのか?」
「あいつって、スモークおじちゃんのこと?」
「ああ」
「うん!おじちゃんと僕はとっても仲良しなんだよ」
「あいつがお前と、仲良し…?」
なんだか意外そうな反応に、ハテナはちょっと首をかしげた。
「そうだよー、おじちゃんはやさしくてあったかい音だから、僕、大好きなのー!」
「・・そうか」
今度は、その人はなんだかうれしそうだった。

「おじちゃんのも、スモークおじちゃんの音そっくり!もしかしておじちゃん、スモークおじちゃんの双子?」
「双子、ねえ。」
ふふ、とその人は楽しそうに笑った。
なんだか馬鹿にされてるみたいで、ハテナはちょっとむーっとした。
「そんな近いわけじゃねえが。そうだな、遠い親戚ってやつだ」
「遠いの?どのくらい遠い親戚?」
「すごくだ。多分、ここから出発して地球を一周して、また同じ場所に戻ってこられるくらい」
「僕、そういう意味の遠いって言ったんじゃないよ!」
子供あつかいしないで!と頬をふくらませるハテナに、その人はちょっと困って、悪い悪い、と苦笑した。
その仕草が、またスモークに似ている。 

「そうだ・・・。あいつ…スモークは元気にしてるか?」
「うん、元気ー!この前もね、僕と一緒に遊んだんだよ!」
「そうか…」
「ねえ、今からおじちゃん呼んできてあげようか?おじちゃん、スモークおじちゃんの遠い親戚なんでしょ?」
スモークおじちゃんきっと喜ぶよ、というハテナに、その人は少し悲しそうに言った。 

「いや・・むしろ今日のことは、スモークには内緒にしておいて欲しいんだ」
「ええー!?なんで?おじちゃん、スモークおじちゃんの遠い親戚なんでしょ?」
「ちょっと事情があってな。俺はあいつには会えないんだよ。分かってくれ」
「・・わかった。」
なんだかちょっと納得いかなかったけれど、真剣なその人の様子に、ハテナはうなづくしかなかった。 

「頼むな、男と男の約束だ」
男と男の・・・。
なんだか、その響きがカッコイイ。
「うん!」
元気よく返事をすると、いつの間にかその人の姿はどこかに消えてしまっていて、呼んでももう一度姿を現すことはなかった。

「おーい、ハテナー!」
聞き覚えのある声がして、ハテナはそちらをふりかえった。
そこには、大好きな神様がいた。
「もう帰るぞ。お前、こんなとこでなにしてたんだ?」
「ナイショだよ!男と男の約束だもん!」
だから神様でも教えられないのー、というハテナは、満面の笑顔だった。
きっとまた会えるだろう。
あの、スモークによく似たおじちゃんに。
- 14 -
[*前へ] [#次へ]
戻る
リゼ