2.

「……で?」
「ん?」
「で?」
「あーそうだった、ケーキならナルト、お前の為に買ってやってるのがもう一つあるからそれ食い終わったら食えよな」
「ああもう!ちげーよ!今日は何で呼んだんだって聞いてんだってばよ馬鹿サスケ!」

ちなみにサスケは今日も今日とて平日真っ盛りだというのに学校へ行ってないばかりか授業を受けていた俺を呼び出して挙句昨日していたエロゲをやってやがった。いつものことだけど腹立つ。しかも今日は甘酸っぱいベリータルトを出してきたが冷蔵庫にはまだケーキがあるらしい。自分はケーキ食わないくせ甲斐甲斐しく買ってくるのか甚だ疑問だ。

「今日はなんだってばよ?流石に単純な理由は飽きたからもっと斬新な言い訳でもしろよなこのムッツリ!」

そう言ってサスケの背中を蹴る。
本当はちゃぶ台なるものを(ryだがサスケん家にそんなものはないし、なんとなくテーブルに怒りをぶつけるのもあれだなと思って直接本人にダメージを食らわした。よってテーブルは今日無傷である。
おかげで今まで反応していなかったサスケは、背中を蹴られたことに対して何か見出したのか「ああ……」と呟き、ナルトを見つめるのを止めた。いつもと違う応答に、サスケを蹴りあげてしまったのを後悔して心配になってきたのは不可抗力だ。

「そうだったな、そういえば……理由か……」
「……なんでいきなり声のトーンが下がるんだってばよ……」
「いや……その…」
「……どうしたってば?」

卑猥な映像が写っている画面を無心に見つめるサスケだが、まるで神に懺悔するように深刻に告白し出すもんなのでナルトはついに真面目に耳を傾けてしまった。
(……あれだな。もしかしたらエロゲで不登校なのもそれはただのカモフラージュですごい悩み抱えてんのかもしんねーし……ストーカー被害が復活したとかだったら引きこもってんのも頷けるし、なんにしろこんな戸惑うサスケは初めてだからよっぽどなんだろうな……)
そういう話なら、サスケの真面目に話を真剣に聞いてやりたいし俺なりにサスケの役に立ちたい。何だかんだ言っててもナルトはサスケのことが大事で放っておけないのである。

「……言いにくいんだが」
「俺なら誰にも言わないし、大丈夫だってばよ?」
「引かないか?」
「引かねえってば」
「……ありがとう。えっと、その…だな」



「ユリアちゃんがナルトに見えちまってそれで焦ってテンパった電話しちまったんだよ」
「あーなるほどなぁ大変だなそりゃ……」

(…………あれ?)

「うーんそうだよな似てるよなーやっぱり俺は変じゃないよな」
「……………は!?」
「ああ確かに似てるユリアちゃんとナルト……」

ぶつぶつ呟きながらもエロゲプレイ作業は怠らないあたり賞賛に値するがナルトにとっちゃそんなの全然視野に入れる事柄ではないのでして。ナルトはもう一度サスケの背中に蹴りを入れた。手加減無しの蹴りはサスケを前のめりにさせた。

「うがっ……ってーなウスラトンカチ!」
「サスケお前っいい加減そんなつまんねーことで俺を呼び出すなってばよ!!!」
「は!?ばっばかやろう!勿論純粋な意味でお前に会いたかったのもあるっていうか事態はそんなイージーじゃねえんだよウスラトンカチ!」
「俺がユリアちゃんとかぶったなんて十分くだらないイージーな話だっつの!」
「それはまだ序の口だ!」
「じゃあ一体なにがノットイージーなんだよ!!!」
「非常に難しい事態が起きたんだよ!」
「具体的に言えってばよぉ!!!」
「だから……!」

ぐっと喉を詰まらせたように口を閉じ眉をよせて黙っていたサスケだが、数秒後決心したのかキッとナルトを見据え口を開いた。

「だから、俺はお前でヌいちまったんだ!!!」
「ああそうかよ!………えええええ!?」
「あああ引くな馬鹿ナルト!引かねえって約束しただろ約束破んな!」
「いやっちょっええ!?嘘だろ!?」
「うるせぇちょっと黙れよ!ああ!」
「おおおおちつけサスケ」

混乱で頭を抱え出したサスケを見て、嫌悪より先にまずわたわたと背中をさする俺も十分混乱してる。引いてないけど俺も頭抱えたい。何故ナニの話に飛躍する。斜め上すぎる。こんな斬新さは求めちゃいないのに。

「……はぁ、わりぃ……まず、順を追って、説明させてくれ」
「……おう」
「……まず、一つ」

おそらく自身も信じ難い出来事だったようで、日頃冷静な彼の珍しい動揺が見てとれる。サスケは何度か深呼吸をした後にゆっくり話し出した。

「……俺ん中で金髪碧眼がブームで、結構な間それが続いてることだな」
「うん……確かにそーゆーキャラでやるの前から多いってばね」
「……そして二。どうやら漫画アニメゲームだけじゃなくて三次元の金髪碧眼もイケるようになったみたいで、まあ嫌悪がなくなっただけなんだけど」
「受け入れられるようになった?」
「……ああ。で、いよいよ二次元抜けしちまうのかと怖くなった」
「……なるほど」

そりゃあ今まで一緒に過ごしてきた大切な存在が、たかが自分の好みで手放す程度だと分かった暁には相当精神にくるものがあるだろう。サスケがどれだけ二次元に愛を注いできたかを知っているナルトはそれを理解出来た。

「昨日は気に入りのゲームをしてたわけだが……その、ユリアちゃんがお前とかぶったんだ……そして、」
「う、うん?」
「……………………はあ」
「ちょっ……分かった分かっただから落ち込むなサスケ!大丈夫だって!な!?」
「大丈夫じゃねーよ……最低だろ」
「もう!全っ然大丈夫だってばよ!それはつまりだな……えーっと、えっとその、あーあれだってば!あれ!」

サスケはおそらく俺に嫌われるかもしれないという怯えと自分の行動に心底参っているらしい。ここはその両方を取り除いてやらねばなるまい。自己嫌悪からか両手で顔を覆うサスケを何とか元に戻すため、ナルトは普段あまり効率よく動かない脳を必死に使って考えに考える。

そして考えた末に出した答えは。

「……ほら、あれだ!お前は金髪碧眼なら性別とか歳とか関係なく良いのか無意識に試したんだってばよ!」
「!その見解は……ウスラトンカチお前スゲェな!」
「ユリアちゃんと俺は、まあ性別は違えど金髪碧眼日焼け肌に童顔……似てると思うのは当たり前だし」
「な、なるほど……」
「だから大丈夫だお前は変じゃねえよ……サスケ、気にしちゃ駄目だってば。お前はこれからも二次元を愛していけるし、しばらくしたら黒髪黒目の美少女がブームになる」
「ナルト……!っごめんな……そんなつもりなかったのに……よりによって大切な友人を想像して俺は……」
「だから気にすんな!俺が気にしてねーんだからさ。ほらそんなことよりサスケ、ユリアちゃんが待ってるってばよ?」
「ああ……!」

数年ぶりに見る満面の笑顔をナルトに向かってよこした後、サスケはふっきれたようにゲームにかじりついた。再び異様に高いアニメ声が部屋を覆う。
そんなユリアちゃん役の声優迫真の演技(18禁)をBGMにベリータルトをつついてナルトがぼんやり呟いたのは別に悪い気はしねーんだけどという許容の言葉だったのだが、呟いたそれは画面に映っているユリアちゃんのいやらしい喘ぎ声で見事掻き消されたので、サスケには聞こえない。











本当は文章の中に匂わせたかったのですが力量が足らず言い訳をします。サスケ君は無意識にナルト君の雰囲気を追い求めていて、少し共通点があるだけでもドキドキしちゃう思春期さんなのです。

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リゼ