「……なぁ、サスケ」
「なんだよ」
「オレなんか疲れた」
「……へえ?」
「眠くて死にそうだってばよ……」
今までの緊張感から解き放たれたようにあくびをして机に突っ伏した。サスケは勿論のこと、ナルトも今日の愛の告白を考えていた為に昨日は全く寝ていないのだ。
「奇遇だな、俺もだ。昨日から一睡もしてない上にこの気持ち良すぎる暖かさ、それに加えお前の空気読まない大告白で俺はやる気を完全に喪失してしまった…ちょっと寝るから30分後に起こせよ…」
「空気読まなくて悪かったな……」
「もういい。そうだ、俺は今から寝る」
「う、ん……」
「だからちゃんと起こせ、それで許してやるから」
「んー……」
「おい、聞いてんのかドベ」
「……………」
「……寝るからな、ちゃんと起こせよ、わかったな……」
…バタリ。サスケはノートと参考書を枕にして、テーブルに突っ伏した。
*
チュンチュンと雀が鳴く中、カーテンから透けて入る光の眩しさに、サスケは目を開けた。
太陽の木漏れ日が嫌に染みる。目が光に慣れていないからだろうが、まるで朝みたいだ。よっぽど気持ちよかったのか、起こせと頼んでいたナルトまでも爆睡している。他の人間から見ればただの間抜け面かもしれないが、先ほど幸せなやり取りをしたサスケには、無意識の内に出たであろう彼のよだれまでもが愛おしくて仕方がない。サスケは穏やかに微笑んで、可愛い彼のよだれを己の手で吹いてやった。
「……そういえば、今何時なんだ?」
ナルトが寝ていることから、おそらく30分以上寝てしまったのだろう。今夜は本当に徹夜になりそうだ。中学生は大変だ。
そう思いながら机から起き上がり、半ば寝ぼけたまま時計を見た。
一瞬、脳みそが停止する。
(…ありえない。)
もう一回、電子時計の時間と日付を見る。やっぱりありえない。が、どうも事実らしい。
サスケは思わず倒れそうになった。ていうか倒れることが出来るのであれば倒れたい。
(……嘘だろ!?)
只今の時刻は8時5分前なのであった。
「ああああ、なんで朝なんだよおおお!おい兄さん、ご丁寧に毛布までかけてんのは有り難いけどなんで起こさなかった、つかナルトも何で寝てんだよお!あーマジふざけんなあ!」
「……いや、すまない、ものすごく安らかな寝顔だったので起こせなかったんだ……」
許せサスケ、と呟くと、イタチは心からすまなさそうに頭を下げた。
優しい兄にそこまでされるとサスケは言い返すことも文句を言うことも出来なくなる。早くに親を失ってから、兄であるイタチには言い尽くせないほど世話になっていた。そんな大切な兄を貶すなんて、とてもじゃないが出来ない。所詮サスケはブラコンである。
仕方ないので全てナルトのせいにしようとサスケは心に誓った。
「い、いや、兄さんは悪くないよ。そんなことよりナルト起きろぉお!今日遅刻したらヤバいぞ!」
そう言いながら、ナルトのピンク色の頬にシャーペンを突き刺す。昨日も同じ場所に突き刺したせいか、ナルトは敏感に反応した。
「い、いぎゃぁあああ!こいつまたシャーペンで刺しやがったな!なんて男だこのドエス!」
「っこんのウスラトンカチ!そこのパン適当に食って学校行くぞ!」
「は、朝なのかよ…。え、風呂は?昨日風呂入ってないってばよ!?」
「入ってる暇ねぇよ、行くぞ!」
「いやあああ不潔!サボろうってばサスケ!」
「アホかお前は、今日は大事な中間テストだぁああ!」
「うわぁ勉強してねぇってば、サスケサスケ、泣いていいかな?」
「バカヤロがっ…俺は既に泣いている!」
テストが双方共に悲惨なことになったのは、もはや言うまでもない。