ばれんたいん?


2月14日。
地球ではバレンタインと呼ばれ、女性が男性に甘いものを贈る日である。
春雨戦艦内の一室で、阿伏兎は頭を抱えた。
今日はそのバレンタインなのである。
阿伏兎は去年のバレンタインを思い出す。
まだ云業がいたころだ。
神威が、「地球の風習にならってみようよ、ってことで阿伏兎よろしく」なんていうものだから、阿伏兎はしかたなく云業とともにチョコを作り神威へ贈った。
本当は今年もそんな流れになるはずだった。
だが云業がいない。
さらには、高杉晋助率いる鬼兵隊なんてのが増えてしまった。
神威だけに作るのは何だか気が引ける。
我ながらつくづく損な性格だな、と自重気味に笑って、台所へ立つ。
材料は買った。
作るのは、トリュフ。
去年云業と作ったところ好評だった。
作り方はだいたい覚えている。

「さて、奴らが寝てる間に作っちまおう」

阿伏兎は髪を輪ゴムでくくり、腕をまくった。



* * *



「阿伏兎おはよう…甘い匂いがするね…?」

「今日はバレンタインだからな」

「そっかあー」

ふわふわと欠伸をする神威。
部屋に備え付けのソファーに腰掛ける。
そこへ阿伏兎がぽいっ、と何かを放った。
神威がキャッチ。
リボンがかけられた、小さな箱。
開けると、中にはトリュフが数個。

「乙女だねえ」

「何か言ったか」

「ふふ、いや」

神威が笑うと、がちゃりと戸が開かれ、高杉、万斉、また子、武市が部屋に入ってきた。

「…オイ…この甘ェのはなんだ」

「チョコ…でござるか」

「甘ったるいっス」

「あなたですか、阿伏兎様」

「ああ…悪いな。これでも持ってけ」

阿伏兎が4人へ神威と同じ箱を投げる。
神威が不服そうな顔をした。

「こいつらにも作ったの?」

「平等にな」

「…」

箱を受け取った高杉と、神威の視線がぶつかる。
笑う高杉。
神威は無表情でそれを見ると、

「阿伏兎、こっちきて」

「は?なん………っ!?」

近寄った阿伏兎を引き寄せ、唇を重ねた。

「ん、むぅ…っ!?」

パニック状態になる阿伏兎を差し置き、神威はそのまま高杉へ視線を移す。
高杉はその視線を受けると、また笑った。
その横では、万斉がほぉ、と感嘆し、また子が食べかけたトリュフを吹き出し、武市が無表情で神威と高杉の視線を追っていた。

「…だん ちょ……てめぇ、っ」

阿伏兎が抗議するが神威は何も言わず、やはり高杉を見ていた。
狩るような目で。
笑って。

――――穫れるもんなら穫ってみてよ。


高杉も、また笑った。












***

バレンタインシリーズ終了。

かむあぶ←高 みたいな…

がんばれ阿伏兎!←


- 6 -
[*前へ] [#次へ]
戻る
リゼ