バレンタイン!


今日はバレンタインか。
土方がそう気付いたのは、朝起きた瞬間に甘い匂いが立ちこめてきたから。
むくりと起き上がり、時刻を確認する。
6時。
早く起きすぎたか、と思ったが二度寝をする気にはなれなかった。
頭をがしがしとかきながら匂いの元であろう部屋へ向かう。
襖を開けると、近藤がいた。

「やっぱりアンタか…」

呆れながら呟くと、近藤はくるりと振り返った。

「おはよートシ」

土方が近藤の手元を覗き込むと、そこにあったのは、大量のチョコ。
吐き気が込み上げ、近藤から少し離れる。

「朝早くからよくんな甘ェモン作れるな」

「昨日は時間がなかったからなあ」

笑う近藤。
誰にあげるかは大体予想がついているが、念のためきく。

「誰にやるんだよ」

「真選組のみんなとー万事屋の三人とーお妙さん!」

意外な名前を聞き、思わず驚く。

「なんで万事屋なんかに…志村弟とチャイナ娘はまだしも…あの腐れ天パにやる必要はねーだろ」

「いやーあいつ甘党じゃん?この前たまたま会ったときにせがまれちまってよ」

「だからってな…」

はあ、と息をつく土方。
やはりあの天パは気に食わない。
そう思っていると、近藤がふと気がついたように、

「トシのチョコはないからな」

「………は?」

「ああ、勘違いするなよ。別のがあるんだ」

「あ?別だあ?」

土方がもう一度近藤の手元を見る。
だがそれらしきものはない。
と、ぐいっと襟を引っ張られた。
次いで、唇に感触。
そしてすぐに離れる。

「…ハッピーバレンタイン、トシ」

「え」

にぱ、と近藤が笑う。
まさか、

「今のが…?」

「い…嫌だったか?」

「……」

無言になる土方の表情を窺う近藤。
ダメだったか、と目で訴えているのが分かる。
なんというか、
これは、

「可愛すぎだろ、アンタ」

「へっ?」

疑問符を浮かべる近藤を抱き寄せる。
甘い匂いが鼻を突くが気にしない。

「ありがとな…近藤さん」

「ん…ホワイトデーに返してね」

「……いや、」




我慢できねェから今返すわ。








***


バレンタイン2012土近でしたーいえーい

銀マダかむあぶもそのうち書きますかね
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