サヨナラウンメイ
運命が変われば、世界は変わるのか?
世界が変われば、運命は変わるのか?
暗い路地裏。
「真選組っつってもやっぱりこんなもんかねェ」
高杉が呟いて、キセルをふかす。
(なんとか鬼兵隊[あいつら]と合流…)
「っ」
かしゃん、とキセルを落とす。
路地の奥だったため、追っ手に気付かれることはなかったが、高杉は壁に背中を預けて床に座り込んだ。
下ろした腕から、血が流れる。
(俺としたことがこのザマか)
真選組の鬼副長に斬られたものであった。
どうやって止血をしようかと考えていると、
見慣れた黒い制服が目に入った。
「…近藤」
高杉の口端が歪む。
「高杉…っやっぱさっきトシに斬られてたか…」
「何のようだよ」
「え?」
近藤が当たり前のように自前の包帯で高杉の傷を処置していく。
高杉はその様子を見終わってから、さも可笑しそうに笑った。
「ククッ、てめえも堕ちたもんだな…敵助けて敵と付き合って」
「うるせーな…お前も同じだろ」
「まァな」
きゅ、と近藤が包帯を結び終わったところで、無線が鳴った。
『どうだ近藤さん、そっちは』
「ダメだ、何もねぇ。もう少ししたら屯所に行くから、トシはみんな連れて先に戻ってろ」
『分かった。くれぐれも気をつけろよ』
「ああ」
土方とそう会話し、ぷつりと無線を切る。
「愛されてンな」
「そうなのか?」
近藤がきょとんとする。
可哀想な副長さん、と高杉は鼻で笑ってから、突然近藤の体を引っ張り、胸に収めた。
「ちょ、高杉…っ」
「…やっと二人きりだ、勲」
「…ああ」
ぎゅう、と高杉が近藤を強く抱きしめる。
だが近藤は待ちきれないといった様子でその腕から顔を出し、高杉にキスをする。
「…せっかちな野郎だなァ」
「だって何ヶ月ぶりだよ?半年は経ってるだろ」
「だな」
二人が付き合ったわけはまあいろいろあるのだが、
警察組織のトップと悪人野郎という組み合わせである二人は、なかなか会うことが出来なかった。
高杉が江戸に来る度会うのだが、間の期間がいかんせん長いのであった。
「勲」
「なに」
「ヤらせろ」
「盛るなばか」
「今は真夜中だがな…盛って当たり前じゃねェか」
「今日はだめだっつの」
「チッ」
舌打ちするなよ、と近藤が言うと、高杉がその唇を即座に塞ぐ。
舌を差し入れて、近藤の中を蹂躙するようにする。
「ん…あっふぁ…」
「色気ねェなァ」
「…う、るさ」
「ククッ、まあそこがいいんだけどな」
そうしてしばらく体を触りあって。
一段落したところで高杉が切り出す。
「これは運命なんだろうなァ」
「?」
「俺とおめぇはこんなに愛し合っているのに神は許してくれねェ」
「…」
「運命ってやつは余程俺が嫌いらしいな」
「それは違うだろ」
ぴしゃり、と近藤が返す。
高杉がちらりと近藤を見やる。
「お前も俺も、自分で決めて『ここ』にいるんだからよ」
「…違いねェ」
納得し、笑う。
近藤は江戸を守るために、自分は江戸を壊すために、『ここ』にいる。
相容れることはできない。
「それも運命なんだろうなァ」
「?」
高杉の呟きに近藤が首を傾げる。
だが高杉は続ける。
「運命を変えることはできねェのかね」
「そんなこと、許されるわけねーだろ」
「許す許さないの問題じゃねェ」
こんな運命から逃げてしまいたい。
自分がこうも歪んでしまったのは、自分のせいかもしれないが、大半は運命のせいだ。
先生が、いなくならなければ――――
いや、そのことは今は問題ではない。
さらに大切な人間が出来た。
問題は、そいつを『こちら』へ連れてきてもいいのか、という一点。
自分と真逆の、恐ろしいほど純粋なこの男を―――――
答えは案外すぐに出た。
「勲」
「…なんだよ」
高杉が近藤の首筋にキスをする。
するりとその頬に手を添えて、唇を重ねる。
やはり手に入れたい。
運命に抗ってでも。
「勲」
「だからなんだよー…」
「世界から、逃げねェ?」
それではさようなら、運命
***
初な高近
高近むずいわー…好きなのに
案外純粋恋愛な高近が好き
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