絶望の中にあった希望に絶望


痛い。死ぬ。痛い痛い。死なせてください。

口から溢れる言葉が奴等に届かないことは、数ある文献や経験で知っている。それでも、痛みから解放されたい一心で声を発した。

痛みに興奮する変態性欲──マゾに目覚めて十数年経つのだが、これには堪えきれまい。

死ね、早く、死ね早く、死んでくださいよ、

下半身を汚ならしい口に呑まれ、一息に噛み砕かれることもなく、私は空を睨みつけた。伸ばす手も無いけど、あの蒼穹を舞いたい。

生い茂る葉の隙間から射し込む光は、かつて求めたもの。脳裏に浮かぶのは、分かち合う喜びを教えてくださった愛しい初恋の男。

そもそも私は惚れた彼に与えられる刺激以外で興奮なんざしないのです。彼こそが至高、故に焦らされることも一興っ!

だけどあなたは!全っ然!気持ち良くない!

今、奴が私を見た気がした。その目ん玉に、憎悪を込めた刃を突き刺してやりたいなぁ!その醜い肉塊を、切り裂いてやりたいなぁ!哀しいね、力量の差を思い知らされてさぁ!

ぐっと腰の付け根に力が加わる。異臭を放つ大きな口に上半身をも呑まれるのはどうでもいいが、無意味にいただく命に感謝してね。


「……リ──」


せめてもの心残りは、耳障りな粉砕音と共に聞こえた彼の悲痛な叫び声、でしょうか。



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