体育祭1-1
8.体育祭1
『では、そういう事でみなさんお願いしますね。』
『はーい!』
朝のHRが終わって、若王子先生は教壇の上の書類をまとめると教員室に戻っていった。
体育祭が10日後に迫り、各クラス競技に出る生徒を今日6時間目のLHRで正式に決めるのでそれまでに各自考えておけってこと。
さきほど渡された体育祭プログラムを見てクラス中がざわめいている。
わたしはどうしようかな。
パン食い競争出たいなぁ…。
『それだけですむと思わんことやな!』
はるひがわたしの目の前でびしーっと人差し指をたてかまえた。
『え?』
『体育祭や!』
いつもの三人、中庭のベンチでお昼を食べていた。
パン食い競争に出たいと言ったわたしにはるひがくいついてきたのだ。
『そうですね。真珠さんはいわゆる「うちのエース」ですから、出来るだけたくさんの競技に出てもらうと助かります。』
千代美ちゃんも顔をあげて会話に加わる。
『エースねぇ…。』
確かに体育は好きだけどそんなに期待されても緊張してしまうだけで…。
『クラス対抗リレーには出てもらわんとな!あれ得点高いんやで!』
なんだかすごい勢いのはるひ。
『そいで、勝ったら若ちゃんになんかおごってもらうんや!』
グッとコブシを握り締めるはるひ。
ああ、なるほどね…。
『うーん、でもわたしそんなに出られないよ?応援合戦出るんだもん。』
ええっ!?と不満げな声を上げるはるひ。
となりで千代美ちゃんも目を見開いている。
『なんでや!?そりゃあんたはチア部で応援好きかもしれんけど…』
応援合戦は2回。
1年生メインで午前の部一番最後。
2、3年生メインで午後の部最終プログラムクラス対抗リレーの前。
特に1年生は各運動部へ新入部員のお披露目も兼ねているため絶対に参加との部からのお達しなのだ。
その旨を話すとはるひは大きくため息をついた。
『まぁ、しゃあないなぁ…。残念やけど…。で、なんなら出られるん?』
『えぇとね、午前午後1つずつくらい。クラス対抗リレーは残念だけどチア部員は3年までおあずけなんだ。』
『3年になったら出られるんですか?』
千代美ちゃんが首をかしげる。
『うん。3年生は最後だから自由なんだよ。応援の参加も、競技の参加も。だからクラス対抗リレーに出場する先輩もいるんだ。』
おちついたのかはるひもベンチに腰を下ろす。
『へぇ。それで1,2年はそれのフォローってとこやね?』
『うん!いい思い出作って欲しいもんね。…そんなわけでごめんね。』
ふたりはフルフルと首を振った。
『じゃあ、400Mはどうや?あれも得点高いんや!』
『ああ、あれなら午後の2番目だから出られそうですね?』
疑問系なんだけど顔にはしっかり『出てね!』って書いてあるよ?二人とも…。
んー。まいっか。
勉強じゃ若王子クラスの足を引っ張ること必至だし…ね。
『わかった。じゃあ400Mとパン食い競争に立候補するね。』
答えを聞いて、二人はにっこり笑った。
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