羽ヶ崎学園-1
2.羽ヶ崎学園
海沿いの長い坂道をのぼっていくと羽ヶ崎学園が見えてくる。
広い校庭の奥に校舎が見える。
敷地ぞいにまがって、もう少し坂を登ると校門。
風に乗って桜の花びらが降ってくる。
ここで3年間すごすんだ。
よろしくおねがいします。
ぺこっと校門に向かって礼をして、校内に入ろうとしたところでわたしを見ている視線に気付いた。
……あれ?
あのひと…もしかして今朝地図描いてくれた…
『げっ……。』
『あっ!!やっぱり!高校生だったんだ…。』
今朝会った時はもっと大人だと思ってたんだけど、制服着てるし…
てか、また『げ。』ですか…。
『ちょっとこっち来い!』
『ええっ!?』
彼はわたしのカバンをひっぱると校舎の影に連れてきた。
『おまえ、ウチの一年だったのか…。』
なんかえらい不機嫌なんだけど…
『うん。わたし、水無月真珠。よろしくね!』
とりあえずこれ以上機嫌悪くならないように、笑顔笑顔っと。
『佐伯瑛。1年。名前についての感想は無し。』
さえき…てる…?
『う、うん。あの、今朝はありがとう。わたし、越してきたばかりで…』
なんか頭の隅に引っ掛かったような気がしたけど、さっきはお礼も簡単にすましちゃったし、ちゃんとお礼しなくちゃ。
『そんなことより…今朝のこと。絶対学校で言うなよ?いいか。』
『…今朝のこと?』
『ほら、その…俺が店で働いてるとか、そういうこと。』
あれ、お礼が雑なこと怒ってたわけじゃないのか…。
『う、うん。誰にも言わないけど……。』
『よくできました。そんだけ。それじゃ。』
そう言うと彼は校舎の方にスタスタと歩いて行ってしまった。
佐伯瑛くんか…同い年だったんだ。
それにしても、なんであんなに偉そうなんだろ!
まぁ、いいか。
そんなに頻繁に会うわけでもないだろうし、なんとかなるなる。
あ。
入学式始まっちゃう!
急がないと!!
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