1.黒犬との出会い
それから数日というもの、学校中シリウス・ブラックの話でもちきりだった。どうやって城に入り込んだのか、話に尾ひれがついて、どんどん大きくなっていった。馬鹿げた噂もあれば、身内のエリカが手引きしたのではないか、という噂も絶えなかった。


エリカが通ると必ずひそひそ話が付いて回ったので、あまり談話室の外に出なくなった。周りの反応が面倒だったのだ。それでも廊下を歩くときは必ず、ドラコたちが一緒について来てくれたので、エリカは非常にありがたいと感じていた。




それから何日か経った休日のことだった。エリカはふと早朝に目を覚ました。周囲の注目によるストレスか、最近は眠りが浅くなっていた。もう一度寝れる気はしなかったので、身なりを整え、がらんとした談話室に降りた。少し冷たい秋の空気が心地よかった。エリカは無性に湖へ行きたくなったので、朝食前に散歩に行くことにした。





「…ふぅ。」

湖へ着くなり、エリカはため息をついた。自分でも気づかないうちに、根拠のない噂や周囲の視線に疲れていたのだ。朝日に照らされてキラキラと光る湖を見ていると、少しずつその疲れが癒されていくような気がした。



ふと景色を眺めていると、何やら黒い毛玉のようなものが目に映った。よく見ると、その毛玉のようなものは、ガリガリに痩せている大きな犬で、こちらを綺麗な目で見ていることに気がついた。

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リゼ