1.医務室
「ーーーーーーーー?」

「ーーーーーーーーよ。だからーーー」

誰かが喋っているのが聞こえる。誰だろう?カチャカチャという金属音も聞こえる。そしてこの肩の痛みは一体…?


エリカがゆっくりと目を開けると、そこには真っ白な天井が広がっていた。


「目が覚めましたか!傷は痛みますか?」

声の主がマダム・ポンフリーだとわかり、初めてここが医務室だと気づいた。そしてそれと同時に、ヒッポグリフとの出来事が、頭の中を駆け巡った。さっきから肩がズキズキとするのは、ヒッポグリフに攻撃されたからか、と1人納得した。





「あの、ドラコは?ドラコはどこですか?」


エリカが聞くと、彼はとっくに退院したと教えてくれた。

どうやら自分は丸一日気絶していたらしい。一度に血を多く失ったのと、普段から寝不足だったのとで、目覚めるのが遅かったのだろうとマダムは言った。


「一週間は絶対安静です。傷は残りませんが、しばらく治りませんよ!」


彼女はエリカに薬を飲ませ、ヒッポグリフを授業で扱うなんて危険すぎる!とぷりぷりしながら戻っていった。


まずいな、とエリカは思った。ハグリッドの授業でドラコと自分が大怪我をしたことがルシウスにばれたら、絶対に大きな問題になるだろう。




「…エリカ!目覚めたのか?!」

しばらくして、サッとカーテンがあいた。見舞いに来たのはドラコだった。彼の手は、痛々しく包帯でつられている。


「すまない、僕を庇ったばかりにこんなことに…。怪我は痛むかい?」


「ええ、かなり。けれど、貴方が助かって良かったわ。これに懲りたらもう魔法生物を馬鹿にするのはやめることね。
それより、ドラコ。貴方、ルシウス伯父さんにこのことは?」


エリカが言うと、ドラコはサッと顔を青くした。大方、自分が気を失っている間に手紙を出して、知らせてしまったのだろう。


「彼はなんて?」

「…このことを訴えるらしい。おそらくハグリッドが停職になるか、もしくはあのヒッポグリフが殺される。」


「…ハァ。まぁたしかに、ヒッポグリフは私たちにはまだ早すぎる内容だった。けれど、ハグリッドの説明を聞かなかったドラコにも非はあるのよ?」

そう言うと、彼の顔にサッと赤みがさした。


「…たしかに僕も悪かったさ。でも、怖かったんだ!目の前でエリカが気絶して、僕たちのローブは血まみれ。僕は君が、本当に死んでしまったかと思った!!」


ドラコが顔を真っ赤にして怒るのを見てエリカは、きっと彼は馬鹿にしていた魔法生物に怪我させられたことが悔しくて、伯父さんに言いつけたのだろうと考えた自分を恥ずかしく思った。ドラコは、自分を心配してくれていたのだ。
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