4.書店
エリカとセオドールは、書店の新しい紙の匂いや静かな雰囲気が好きだった。2人は教科書を店員に預け、それぞれ好きな類の本をパラパラとめくっていた。




さらに、思いがけない出会いがあった。『無言呪文の基礎』をエリカが読んでいた時、ふと目の前を燃えるような赤が横切ったのが見えたのだ。



「…ジニー?」

顔を上げて呟くと、彼女は勢いよく振り向いた。


「…エリカ?エリカじゃない!久しぶりね!」


ジニーは相手がエリカだとわかり、ニッコリした。

彼女と話したのは、リドルから救い出した時と彼女が退院してお礼を言いに来た時の2回だけだが、この夏中の手紙のやりとりで、随分親しくなったように感じていた。


「久しぶりね。エジプトは楽しかったかしら?」


「えぇ、もちろん!素敵な場所だったわ。でもうちの双子の兄たちが別の兄をピラミッドに閉じ込めようとしたりして、なかなか大変だったんだから!」


エジプトの滞在がよほど面白かったのだろう、彼女は目を輝かせて語り出した。その様子がどことなくパンジーのはつらつさと似ていて、エリカは友人に会うのが待ち遠しく思えた。








「ジニー・ウィーズリーと親しかったのか?」

書店を出るジニーに手を振って別れると、いつのまにかセオドールが後ろに立っていた。


「えぇ、去年リドルから救い出した話はしたでしょう?それから仲良くなったのよ、この夏も手紙のやり取りをしていたわ。」


「へぇ…エリカって意外に他寮の友人がいるんだな。セドリック・ディゴリーと知り合いだったことも随分驚いたし。」


「そうでもないわよ。今のところ親しいと言えるのが、セドリックにジニー、それからネビルね。レイブンクローには知り合いすらいないわ。」



エリカが言うと、セオドールは、俺は寮外の友人なんて一人もいない、と肩をすくめた。
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