地上に舞い降りた天使


今日は11歳の誕生日。ハグリッドに魔法界のことを知らされ、2人でダイアゴン横丁というところまで買い物に来ていた。
巨大な大理石でできたグリンゴッツ、様々な魔法のグッズが売られている雑貨店、フクロウや猫などの動物がわんさかいるペット専門店……今まで見たこともないような店がたくさん並んでいて、僕はついハグリッドとの約束を忘れ、夢中になってしまったんだ。
気が付いた時には人の波から外れ、マダム・マルキンの店も見えなくなっていた。


「どうしよう……」

途方に暮れたが、後の祭りだ。人々は皆忙しそうに僕の目の前を通り過ぎていった。初めてだらけで、僕はどうしていいのかわからなくなり、不安がつのった。


そんな時だった。輝くような金髪の女の子が目の前を歩いていった。僕は彼女に吸い込まれるようにして声をかけた。


「すみません。マダム・マルキンの店はどこにありますか?」

振り向いた彼女は深いダークグレーの瞳に高い鼻、薄いピンクの唇をしていて、そのあまりの綺麗な顔立ちに少しのあいだ見とれてしまった。


「貴方は、もしかして、ハリー・ポッター?」

彼女はしばらく僕を眺めて言った。漏れ鍋での出来事が思い出された。彼女もまた、あの場にいた人々のように僕を賞賛し、握手を求めてくるのだろうか?

だが彼女は、予想とは違った反応を見せた。何を言うこともなく、マダム・マルキンの店へ連れて行ってくれたのだ。気を使ってくれたのかもしれない。僕にはそんなささいなことが、すごく嬉しいと思った。


制服を無事に合わせ終わり彼女は店を出て行ったのだが、彼女は1度だけこちらを振り返り、会釈したのだ。綺麗な金髪に太陽が反射してキラキラと光っていて、その姿はまるで地上に舞い降りた天使の様だった。


また会うことはできるだろうか。


その答えはすぐにわかることとなる。彼女も、僕と同じホグワーツの一年生だったのだ。彼女の組み分けは残念ながらスリザリンだった。でも僕は、どんな状況であれ、また会えて嬉しい。そう思ったんだ。
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リゼ