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「は…ァ…ッ」

部屋に響く、どんなロリポップよりも甘い甘い喘ぎ声。
愛しい人を支配出来る瞬間。







いつも賑やかな彼の周り。
ブレイクは短い溜息を吐き、口の中の丸い飴玉をがりがりとかみ砕いた。

―苛々する―。

主や弟に上手く遣われ、それでも二人の願いを拒めないギルバートを見ていると、何だかモヤモヤとした感情が込み上げてくる。

―君は私のものなのに―

所謂これは嫉妬。
どろどろとしたどす黒い感情が腹の中から沸き上がる。
吐き気にも似た不快な感情。

「ギルバートくん、」

顔に出来るだけ爽やかな笑顔を張り付け愛しい恋人に声をかけた。

「なんだ」
「今夜、久しぶりに私の部屋にいらっしゃいませんカ?少し、ゆっくりしたらどうデス、疲れているんでショウ?」

罠は常に甘く―内に秘めた暗黒は自分の心に閉じ込めて…



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コンコン

乾いた音が部屋に響いて間もなくギルバートがドアから顔を覗かせる。

「イラッシャイマセ」

ソファから立ち上がり手招きをする。
ギルバートは素直にブレイクのすぐ側までやってきた。

瞬間、腕を引き抱きすくめる。

「うわっ…」
「こうするのも久しぶりですネ…」

これだけの行為に頬を紅く染め遠慮がちに、しかし大人しくブレイクに体重を預けるギルバート。
計算された上目使いで金色の瞳を覗き込み、そのまま口づけを交わす。
次第に深くなるソレ…舌を絡ませ、先程口に含ませておいた飴玉をギルバートの咥内に押し込んだ。

「んッ…、おい、飴が…」
「差し上げますヨ。疲れたときは糖分を取るのが一番デス」

暫く舌でコロコロと弄んでいたギルバートだが甘い味に飽きたのかすぐにばりばりと咀嚼し飲み込んだ。

―甘い甘い毒を孕んだ小さな薄いピンク色の飴玉―

ソファに腰掛け他愛もない会話をしている途中、ブレイクの思惑通りギルバートは意識を手放し眠りに落ちた―。


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リゼ