どうやらあの二人は結婚したらしい。
レギュラスは木陰に隠れながら二人を眺めていた。

「良かったねぇ。」

誰にも聞こえない声で、顔で、口でそう呟く。
悲痛そうに歪んだ顔は誰にも見えない。

夏の空に浮かんでいる入道雲が自分の真上に来て、空を見上げる。

暑くはない。だって今の僕は幽霊だから。

二人が立ち上がって、移動しようとした。

だから二人の後をこっそりとついていく。

久しぶりだな、こうやって三人で居るのは。

そう思ってナマエに手を伸ばす。髪の毛伸びたな。

肩の下まで長さがあった髪は、いまや腰あたりまである。
触れても触れられない手にレギュラスは両手をマジマジと見つめた。


僕は、一週間前から現界している。

二人の結婚式の時からである。

笑いながら、フラワーシャワーを受ける二人の姿を見て、音のない拍手をしていた。

綺麗に着飾ったドレスローブは神様のお誂え物だろうか。

律儀にもレギュラスブラックと書かれて空いている席に僕は座った。

モデルポーズを決めて、写真撮影をしていくナマエに僕は笑った。

ああ…

「僕はまだ、ここに居たかった。」


この空間に居たかった。
どうか最期まで三人で居たかった。

レギュラスは片目から涙が溢れると、人知れず泣いた。





「羨ましい?ねぇレギュラスブラック。」


そう言うナマエに「羨ましくなんて無いよ。」と聞こえない声を出した。

いつかは、こうなると思っていた。
レギュラスはバーティが迎えに来るまでナマエと一緒に座っていた。



一日、一日、昼夜過ぎていくたびに目が覚めるのが怖い。


いつか目覚めない日が来るのが怖かった。

毎日ルーティンのようにブラック邸へと帰って目覚めない日を思って恐怖する。

その時、誰かが姿現しをしてレギュラスの部屋に入った。

バーティだ。
クリーチャーが毎日供えてある僕の好きなお菓子を取ると、またも姿現しをしようとするバーティの腕を掴んだ。

途端に景色が変わる。

「その盗み癖、やめた方がいいよ。」


買えばいいじゃん。と言ってのけるナマエの元へ姿現ししたようだ。
そして、冒頭へ戻る。

「クリーチャーが作ったお菓子の方が喜ぶだろ」

そう言うバーティが綺麗にラッピングしたお菓子を懐に入れる。
(クリーチャーが作ったお菓子なんて、僕くらいしか、喜ばないけど)

レギュラスが首を傾げて、二人の後を追う。


着いた場所は墓所のようだった。
二人はドンドン進んでいくと、ある墓の前で止まった。
レギュラス・ブラック
まさか、家系図では骸骨にされているだけの僕の墓があるなんて思わなかった。

もしかして、二人がたててくれたのだろうか。
懐から先ほどのお菓子を出すと、バーティは墓に供える。


「結婚しました。」

「え?それだけ?」


簡潔にバーティがそう述べると、レギュラスは驚きの声をあげた。

「ちょっともっと何か言ってよ。」


ナマエがバーティの肩をこづく。
すると、バーティは咳払いをして続けた。

「これからは、二人で幸せに生きていこうと思う。お前も見守ってくれると嬉しい。」

「…うん。もちろん見守ってるよ。」

二人は手を合わせて拝む。

そんな二人にレギュラスは覆い被さると、小声で二人の幸せを祈った。


「これから、二人の旅路に幸多き事を。」








20210726

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