「僕は死ぬのか」

貝の器で毒液をすくいながらただひたすらに口へと運ぶ。もう手の感覚さえない。
今の自分は目前の屋敷妖精の魔法で動いている木偶の坊だ。

苦しくないと言えば嘘になる、飲んでいるのは毒だ。
当たり前に苦しい。いっそ一息に死んで解放されたい気分だ。
しかし、目の前の彼は自分よりももっと苦しかっただろう。

来る前より湖の水かさが増したんじゃないかと思うくらいに、涙を流し続ける彼は僕にずっと謝り続けている。

(大丈夫。苦しくない。)

最後の一口を飲み終えるとクリーチャーに微笑みかけた。

「僕の勝ちだ」
「レギュラス様」

レギュラスは震えている膝に力を入れて根性で背筋を伸ばす。
そして空になった水盆から上へとせり上がってきたロケットを手にすると、偽のロケットを置いた。

「クリーチャー、後はたのむよ」
「でも、レギュラス様!」
「お願いだ、行ってくれ。僕はもう無理だ。自分で分かる。君に最期の姿を見せたくない。」

お願いだ。もう一度そう言うと、クリーチャーは涙をいっぱいに溜めながら、口を震わせて後ずさる。

「レギュラス様、クリーチャーは待ってますから」

何処かで聞いたセリフだな。
消えゆくクリーチャーを眺めながら、レギュラスは水盆を背に地面へと崩れ落ちる。

そうだ、ここずっと会っていない友人に言われた。
たしかこんなに悲しいセリフじゃなかったが

「会いたいな」

どうかあの二人には看取ってほしかった。
僕という存在を君達の涙で確認したかった。


『旅行に行ってくる。当分会えないと思う。ごめん』
『そっか。お土産待ってるね』


ダメだ、思い出した。笑いが止まらない。お土産だ。

島に何十人もの白い手がかかる。
どうやらお迎えが来たらしい。

ナマエ。僕の土産はクリーチャーだ。どうか、受けって欲しい。
君ならクリーチャーも心を開くだろう。


「僕の大切な友人達。愛してる。」








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