月下菜津輝様よりお届け物
・1年後のお話
*
「あれから、もう一年か」
は膝を抱えて座り込んだ。海風が優しく髪をなびかせる。
(早いものだな)
「ねぇクォーク、どうして、私たちに何も言ってくれなかったの?そんなに、頼りなかったかな…」
(すまなかった。幸せを、見落としてたんだ)
の頬を涙が一筋つたう。
クォークはに手を伸ばした。しかし、クォークの手は##name1##の髪を梳くことも、涙を拭うこともなかった。
ただただ通り抜けるだけ。
(もう俺は、に触れることもできないんだな)
自嘲気味にその腕を見つめた。
それでよかったのかもしれない。
恨みを晴らして仲間を裏切った俺なんかが、に触れていいわけがない。
そう思うものの、を抱き締めてやりたくて仕方なかった。
「クォーク、ここはクォークが望んだ世界になったのかなぁ?」
の視線は海の向こう、空の向こう、そのまた向こう、果てしなく遠い場所を見つめていた。
(あぁ、や、エルザのおかげでな)
「クォーク、私、幸せになるね!」
はごしごしと涙を拭くと立ち上がる。そして、今まで使ってきた剣をクォークの墓に添えた。
「もう、戦いはないから。ここに置いていくね」
(?)
「私、ルリ島を離れることにしたの。いつまでも引きずってちゃ、いけないでしょ?」
はそう微笑んだ後、その場を走り去った。
新しい未来に進むため、はこの島を離れた。
(、!)
クォークが何度呼んでも、その声は届かない。
もしもを何度願ったか
もしもクォークを止められていたなら
もしもクォークが死なずに済んだなら
もしもクォークが…
もしも、もしも…
もしもに打ち明けていたなら、俺の未来は変わっていたのだろうか?
2012.0131
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