神北様よりお届け物
今度は花弁の舞う島で
・オールキャラ
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一年ぶりに踏みしめたその島は、前よりも一層賑わって見えた。
船から降りて、タシャはゆっくりと辺りを見渡す。大地の荒廃も収まった今、かつてのように大地の欠片が空を舞う事はない。しかし代わりに町のあちこちに咲いた花の花弁がこの島の空を鮮やかに彩っていた。
これもすべて、一年前の事件の結果だ。
今自分がここに立っているのもそうだ。尊敬する師を失いはしたが、自分にとっての騎士道や友人を得る事が出来た。そして自分は大陸を守るとこの島を離れて、今日、休暇という名前の一年ぶりの訪問に心を躍らせている。
この島を託した彼と、その仲間たちはどうしているのだろうか。
「タシャさん。」
ふと、柔らかな声がかかってタシャはゆったりと振り返った。
この声には聞き覚えがある。予想通り、そこに立っていたのはマナミアだった。彼女は腕に箱と、そして何故か花冠を持ったままゆったりと微笑みながら近づいてくる。
「お久しぶりです、マナミア殿。」
「お久しぶりですわ。今日はどういった用事でここに来られたんですの?」
「休暇…という形で。」
「まあ、それは素敵な偶然ですわ。」
遭遇出来て、という意味だろうか。彼女はころころと笑うと唐突に花冠を差し出して、タシャの頭にぽんと乗せる。鮮やかな色のそれは彼の白い髪によく映えたが、何故乗せられたのかはわからない。
反応に困ってしまって何も話せなくなる不器用さは、どうやらこの一年では治らなかったらしい。
「…」
「ふふふ、では行きましょうか。」
「え。」
にっこりと笑ってタシャの手をとり、ぐいぐいとひっぱるように歩き始める。
まさか女性に乱暴にするわけにもいかずに素直にそれを受け入れて歩けば、まるで手をつないで歩く仲睦ましい二人のようだ。
しかし会話はない。決して気まずいわけでは無いが、なんとなく話さなくてはいけないような気がして話題を探す。目に入るのは、大地の欠片の代わりに島を舞う花弁だ。
「花が、増えましたね。」
「ええ。大地が力を取り戻したのもあって、みんなで植えたんです。」
「綺麗だ。」
「そうでしょう?」
嬉しそうに笑うマナミア。彼女はやがて、アリエルの酒場の前で立ち止まった。
どうやらここが目的地らしい。彼らの憩いの場であるここに今も通っているのだなと、なんだか懐かしい気分になる。
タシャはマナミアの手をすっと持ち上げると彼女をエスコートするように階段を登って扉を開いた。
「んだよマナミア、おっせーぞ!」
「あれ?タシャじゃないか。」
「あら本当。しかも可愛い花冠。」
中にいたのは、やはりというか予想通りというか、エルザたちだった。カナンも交えた傭兵一家は酒はもちろん、真ん中に大きな鍋を囲んで楽しそうに笑い声をあげている。
タシャに気付いた彼らは不思議そうに嬉しそうに近寄っては口ぐちに再会の言葉を述べていく。今更になって花冠が恥ずかしくなってきたが、マナミアの手前外さないでいれば彼女は嬉しそうにテーブルに箱を置いた。中に入っているのが酒瓶だとわかって、彼女一人が外にいたのは足りなくなった酒を取りに出ていたのだなと内心苦笑する。
傭兵の一人であるセイレンの飲みっぷりは健在のようだ。
「休暇で来たんですって。」
「それはまた、随分といいタイミングだね。」
「いいじゃないかユーリス。鍋っていうのは人が多い方がいいんだろ?」
「マナミア一人で15人くらいになるじゃないか。」
「まあ、もっと食べていいんですの?」
「おいユーリス!なにスイッチ入れてんだよ!セイレンだけで酒が15人分飛ぶのに!」
「そんなに飲んでねーよ!」
再び騒がしくなる酒場で、エルザがタシャに近付いて静かに笑う。一年前より凛々しくなったような気がしないでもないが、変わらない優しい表情に彼もまた変わっていないのだと少しだけ安心する。変わらないでいられるのだから、この島は今でも美しいままなのだろう。
「相変わらずだな。」
「みんな変わらないよ。タシャも変わったように見えないけど。」
「ふむ、確かに根本は変わっていないだろうな。」
「でしょ。」
「タシャさん、エルザさん。早く食べないと無くなってしまいますわよ?」
「マナミアが食べちゃうってさ。」
「…いただこう。」
もういない事を受け止めて、そして戦い続けている彼らに。
>タシャは誰にともなく小さく微笑んで、そして鍋の具材を皿に盛って近付いてきたマナミアとユーリスにそっと頷いた。
まだまだ続いていく、物語。
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企画にお誘い頂き本当にありがとうございました!
名簿見たら素敵なユーリス書きの方がたくさんいらっしゃって、わたしなんかが参加していいのかとちょっと戸惑いましたが、自分が大好きな感じを突き進みました
鍋は単純にわたしが食べたいからです
これからもLS好きさんが増えますように…
2012.0130
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