みこ様へ/誕生日祝/ティエリア
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ソラに浮かぶ
色形様々な美しい星々
「―――…‥」
聞えたのは優しい響き
そして真っ先に視界に入ったのは、整った綺麗な顔だった。しかもドアップ。
それに驚いて思わず身を引けば、後頭部がガツンと豪快な音を立てて、見事に壁とこんにちはをした。
蹲りながら声にならない声を出す。しかしその痛みのお陰で覚醒し、自分が壁に寄り掛かって寝ていたという事実に辿り着いた。どれくらい寝ていたんだろ。いや、それよりもまず、たんこぶが出来ていないか心配するのが先だと、まだ寝ぼけた頭で思った。
「何をしている」
また声が降ってきた。
先程よりはクリアな音声。改めて見上げれば紅と視線が交わった。夢でなければ、幻でなければ、それはティエリアだ。
「あれ、どうして此処に居るの?」
「質問を質問で返すな」
呆れたようにティエリアが私を見ている。未だズキズキと痛む頭を押さえつつ曖昧に笑い返すと、小さな溜息と共に不意に温かい毛布が肩に掛けられた。
「そのままだと風邪を引く」
「ありがと。てっきり自室に戻ったのばかり思ってたから、」
どうかした?と聞きながら、ティエリアが差し出してきた手を借り立ち上がる。
「君に用があって部屋に行ってみたが、居なかったからもしかしてと思って」
「そっか。で、用ってなに?」
「…今日は何の日だ」
彼はそうぽつりと呟くと視線を逸した。
―――何の日、って…
「その前に今日は何日?」
「1月23日だ**。1月23日」
「……」
まじまじと此方を見詰める**にティエリアはむっとした視線を送る。たっぷりと間を置いてから**が声を上げた。
「あ、私の誕生日か!」
「…君と話して居ると疲れる」
「最近忙しかったから、日付感覚がなかったんだよ。覚えてくれてたんだね」
「こんな覚えやすい日を忘れる方が難しい」
それは暗に馬鹿にしているのだろうか。否、素っ気無い返事のようだがそうではないみたい。どうしよう、ものすごく嬉しい。しかし恥ずかしさ相俟って彼とは反対方面に顔を向けてしまった。すると視界に大きな物体が入った。
「……今回のミッション、損傷が激しかったね」
言いながら**は、先程ようやく修理し終わった自分より遥かに大きいガンダムをゆっくりと見上げた。彼も追う様に見上げる。
今回のミッションでの破損は今までに無いと言える位に、とにかく酷かった。全てが痛々しいまでに傷付いていて本当、マイスター達が無事に帰還できたのが奇跡な程だったと思う。
こんな時 無力な自分がつくづく嫌になる。
私はただ祈りながら、彼等が無事に帰って来る事を待つしか出来ない。
肩に掛けられた毛布を握り締めながら、**は無意識の内にもう一方の手でティエリアの裾を掴んでいた。
「**」
名前を呼ばれたかと思えば手首を引っ張られ、彼の細い腕が私の身体を包む。肩口には軽い重圧感と首に当たるくすぐったい感触。
「君は馬鹿だ」
「僕は死なない」
死んだら君に会えなくなる。肩口で囁くように、しかし確りと。抱き締められた温かさが彼から伝わってくる。すごく安心する。彼の体温を感じながらそう思った。涙腺が緩む。
「だから、」
「 」
再度耳元で呟かれた言葉に埋めていた顔を上げ、ティエリアを見上げる。揺らぐ視界の中に映る彼の頬が少しだけ赤らんで見えるのは睡眠不足からくる錯覚なのか。
胸から込み上げてきた想いは涙となって私の頬を伝った。
彼は不器用に微笑むと、指で頬の涙を拭い、
「誕生日おめでとう…」
低く呟いた唇で、口付けた。
夜と朝の境目に
沢山の風
沢山の星座の巡り
沢山の哀しみが流れていった
幾千の星と
幾千の出会い。
その中で見つけた一つの星。
巡り合えた奇跡、軌跡。
(こんな感情 教えてもらったのは君から)(そんな君がとてもいとおしい)(生まれてきてくれて、ありがとう)
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