白豆様へ/相互/日番谷
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十番隊隊長執務室。
時計を見ると定時まであと少しだった。そして、長針と短針が重なるカチッという音を合図に、


「こんにちは―」


彼女はやってきた。窓から。






 バレンタイン






「いい加減 窓から入ってくるのは止めろよな」

「だって、こっちの方が近いんだもの」

「落ちたら危ねぇだろうが」

「私がそんなヘマすると思う?」


そうだな。小さく笑い返しながら日番谷は、何事もなかったようにまだ終わりそうにもない書類のタワーから一枚書類を取り目を通す。


「え、ちょっと隊長!」

「っぶ!?」


変な声と共に**の顔が近くに立っていた松本の胸へと消えた。そういえば松本がこの部屋には居たんだ、と日番谷は思い出した。さっきの**の声で起きたのだろうか。先程までそこのソファーで豪快なまでに惰眠を貪っていたくせに、とは言わない。


「誰ですかこの可愛い子!!あ、分りましたコレですね!?」


窓から入って来たことには特にツッコまないのか。小柄なその躰を己の胸に沈めたまま松本は、右小指をビシッと立て、日番谷の眼前に突出した。翡翠色の瞳が一瞬にして丸くなった。図星。


「じゃあアタシはお邪魔ですので、」


お先に失礼しますね。日番谷の反応をニヤニヤと楽しそうにしながら松本は執務室から出て行った。一方、松本の腕から開放された**は大きく深呼吸をしている。


「息止め記録自己ベスト更新」

「アホか」

「そこは褒めてよ」

「で、今日はどうした?」

「あ、そうそう。これ」


**はガサゴソと持っている紙袋から何かを取り出すと、ハッピーバレンタイン!と小さなものを手渡してきた。それを見つめた日番谷の眉が寄る。


「お前さ、」

「ん?」

「これは嫌がらせか?」

「まさか。ネムさんが新作出来たからって、冬獅郎にバレンタインついでに味見してもらおっかなーと」

「だからって、明らかに食えなさそうなのは持ってくんじゃねぇよ」

「意外に美味しいかもしれないでしょ?」

「じゃあほら」

「え、ヤダ」

「いくらお前から貰ったもんでも、こんな未知の物体を緑と紫のチョコらしきものでコーティングした異様なもんはいらねぇ」


渡された包装されたチョコ(とは言えない物体)を**に返却する。流石にこれは御免だ。しかし彼女は受け取る素振りがない。


「冬獅郎にあげたものだし」

「他の奴にやって来い」

「もうあげたよ、檜佐木副隊長に」

「…檜佐木は食べたのか?」

「食べた瞬間に走って、叫んで、不味いって」


実際に食った檜佐木よりも、自隊の副部長にそんなものを食わせた**の方がつわものだと思う。
再度返すが受け取らない。仕方ねぇ、と思い日番谷は自分の死覇装にそれを突っ込んだ。


「もう涅からのものは貰うなよ」

「でも気になるでしょ」

「じゃあ他の奴の反応見てから貰え」

「見てから貰ってるよ」

「……檜佐木の反応をか…」


無言で肯定。
すると彼女はまた紙袋をガサゴソし始め、俺の眼前に何かを出した。

「はい」

「?」

「今度はきちんとしたヤツ。…とは言っても手作りで不格好だけどね。でも味は胸を張って保証する!」

「…あるなら最初からこれを寄越せよ」

「それじゃあ面白みがないじゃんか」


彼女はしてやったりという風に笑った。
ありがとな。そう言いながら俺はまともなチョコを受け取った。





 目に見える毒





(あ、美味い)(でしょ)(見た目はこんなんなのにな)(それは言わないで)


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リゼ