※男主/友情
―――――――――



綺麗な弧を描いたバスケットボールが吸い込まれるようにゴールに入った。
その瞬間に鳴り響く試合終了の音、それと同時に客席が歓喜し歓声が上がる。ブザービーター。試合最後の3ポイントシュートを決めた海常高校の一年生はそれに答えるように小さくガッツポーズをした。勝利の決定点を取った喜びは興奮となっていく。その興奮は観客をも魅了し、試合が終わった後でもざわつきはなかなか治まることを知らない。


「また**っちに最後いいとこ持ってかれたー!悔しいっス!」

「んなこと言われても、黄瀬だって前半めちゃくちゃ活躍してたじゃん」

「後半は**っちばっか活躍してた!」


だから悔しいっス!っと**に文句をいう彼は**にとって仲間でありライバルであり、友人である人物だ。名前は黄瀬涼太。彼は汗に濡れた髪をかきあげ汗を拭う、それはモデルというだけあってとても様になる絵だなと一瞬**は思ったが何分中身の性格を知ってる分だいぶ残念に思えた。


「あっつい。毎年思うけど夏の体育館とか酷いっスね」

「んじゃ、さっさと更衣室に戻るか。監督からも話しあるみたいだしな」


整列して挨拶を終えると**は黄瀬にそう言いさっさとコートから立ち去ってしまった。
黄瀬はそんな**の背中を見た後、観客席を軽く見て、にこっと小さく笑い手を振った。それを見ていた観客(の女子達)はたちまち「キャー!」という喜びの悲鳴をあげる。黄瀬はそれをBGMにし**と同じくさっさとコートから立ち去った。


「黄瀬って抜かりないというか抜け目ないというか、まぁ良く言えばサービス精神が旺盛だよな」


どうやら黄瀬が来るのを待っていたようで、出入り口の壁に寄り掛かりながら**がげんなりした顔で黄瀬を見る。
黄瀬が爽やかに笑った。


「俺、ファンの子は大事にするんで」

「キザ黄瀬ウザイしね」

「ひどい!」


って、あ、無視っスか!
後ろから聞こえる声を気にした素振り一切見せずにすたすたと歩く**を黄瀬が追う。


「あ、そうだ**っち」

「なに」


呼びかけに**が足を止めた。
それに先回りした黄瀬が、それから軽く片手を上げる。それに気付いた**も同様に片手をあげた。


「お疲れっス」
「お疲れ様」


パンッと気持ちのよい音が**と黄瀬のいる廊下で鳴り響いた。



ヒヤシンス



(次は絶対俺がいっぱい点を取るっス!)
(なら俺もお前以上に頑張らないとな)

 
戻る
リゼ