雲凪番外編「これからのこと」






心なしか、雲雀の顔にいつもの余裕が戻ってきたように見えた。
雲雀が凪の手を握り、歩幅を合わせながら廊下を歩いている。




「……………。」

そして賑やかな声が聞こえる障子の前に立つ。
雲雀は凪の手を離し、障子を開けた。




「あ、帰ってきた。」

「恭さん、おはようございます。」

「お、おはようございます雲雀さん!」

「雲雀様、凪様、おはようございます。」

「まったく、朝食作りぐらい手伝ってくださいよ。」

白蘭に草壁、綱吉、女中たち、それと骸。
献立が曖昧なものであっても、ちゃんと人数分の朝食はできたらしい。
布団を片付けた大広間で、全員和やかに食事をとっていた。




「へぇ、君って料理なんてできるんだ。」

「失礼ですね。
僕だってもう1人の妻なんですから。」

「ふぅん。
でも、箸の持ち方はちゃんとしようね。」

「ぐ…。」

痛いところをつかれた骸は何も言えずに雲雀をにらむ。
一方雲雀は空いているところに座り、骸を無視して朝御飯を食べ始めた。

だし巻き玉子、野菜炒め、煮物、焼き魚、味噌汁、御飯。
なんとも日本人的な朝食だ。
しかも雲雀好みの薄味になっている。




「この煮物、作ったのは君かい?」

「な、なんでわかるんですか。」

「型崩れしてるよ。
これからは見栄えも考えて料理して。」

「……………。」

「骸君、殺気が痛いから。」

「それと、この焼き魚と野菜炒めは君だね。」

「お、よくわかったじゃん。
何でわかるの?」

「料理は作った人間の性格が出るんだよ。」

型崩れした煮物は、気にしすぎていじりすぎた跡がある。
これは度を考えない几帳面すぎる人間。
綱吉は天然なので几帳面とは言わない。
よって、この中では骸が適任。

焼き魚は両側の焼き加減の違いを皿の盛り付け方で誤魔化している。
そして野菜炒めは野菜の切り方を綺麗にして炒め具合をわからないようにしている。
これは悪知恵が働くひねくれた性格で、かつ社交性のある人間。
この中で社交性がずば抜けているのは白蘭しかいない。




「ちなみに、こういう可愛いことをするのは仕事が早い女中たちだよ。」

そう言って雲雀が箸で持ったのは、花の形に切られた人参。
やはり雲雀のもとで働いている女中はレベルが違う。
凪はそう思いながら1つ1つの料理をまじまじと見た。

一方雲雀は、自分の推理が当たったことに満足しながら食事を進めた。
隣にいる骸は「最初に野菜を煮込んでいたのは白蘭だった」とぶつぶつ呟いている。
それを白蘭が慰め、綱吉が機嫌を取っていた。




「……………。」

そして雲雀は凪が出汁をとった味噌汁を飲む。
具材は他の人が入れてくれたが、基本である出汁は凪が担当した。




「…控えめって感じだね。」

「……………。」

「でも悪くはないよ。」

凪はホッと心を撫で下ろす。
味噌汁でこんなにハラハラしたのは人生初。
それでも、雲雀に悪い思いをさせずに済んだので良かった。




「あぁそうだ。
そこの草食動物。」

「お、俺ですか?!」

「他に誰がいるんだい。」

「そ…うですよね。」

「昨日はよく眠れたかい?」

「まぁ、それなり。」

「ならいい。
後で隣の部屋に来て。」




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