雲凪番外編[特別な人]







ドタドタと廊下を騒がしく走る。
凪が何を言っても無視。
雲雀は力任せに凪の腕を引っ張った。




「恭弥……っ」

「……………。」

しばらく走っていると、1番奥の部屋にたどり着いた。
雲雀は凪を部屋に押し込めて障子をピシャリと閉める。
逆光のため雲雀の表情は見えないが、ピリピリと感じる殺気でだいたいわかった。

これは嘘をついてた罰。
恭弥はきっと許してくれない。




「……………。」

無言で近付いてきた雲雀は、凪の体を跨ぐように覆い被さる。
そこでやっと雲雀の表情が見ることができた。

しかし、目の前にあるのはいつもの澄まし顔。
機嫌が良さそうにも悪そうにも見えないのに、殺気を出している。
これは逆に怖い。

そして雲雀は凪の髪の毛に触れて、しきりに指で撫でていた。
恋愛経験が少ない凪にもわかる。
もう観念した方がいいらしい。
覚悟を決めた凪は目を閉じて、雲雀の着物の裾を掴んだ。




「へぇ…。」

「………っ…。」

「この状況で抵抗すらしないなんて。」

潔い女は嫌いじゃないよ。

凪の体が震える。
本当は逃げ出したいぐらい怖いが、元凶である自分にそんな権利はない。
煽っても抵抗しない凪を見た雲雀は、首筋に唇を寄せて凪の着物に手をかけた。




「………………。」

凪の白い肌が露になっていく。
ブラジャーごと着物を肩から下げて、鎖骨に触れようとした。

その瞬間、
雲雀の手が止まる。




「………………。」

「‥‥きょう‥‥や?」

一時停止した雲雀を不思議に思い、凪が恐る恐る目を開けた。
表情は同じだが殺気が無い。
雰囲気が変わったことに驚いた凪は、本能的に雲雀から逃げ出した。

追ってくる気配はない。
雲雀はただ、凪に伸ばした自分の手を見ている。




「………………。」

何でだ。




「恭…弥?」

「ねぇ、ちょっとこっちに来てよ。」

「……………。」

「もう抱こうとはしないから。」

「………。」

「本当だって。」

「…………うん。」

今のは何だったのか。
凪を抱こうとして触れた時、急に頭が冴えた。
別に凪の魅力に萎えたわけではない。
それなのに何故。

着物を整えた凪は、恐がりながらも雲雀に近寄る。
何かの霊に取り付かれたのではないかと思うほど、行動にギャップがあった。
するといきなり抱き締められた。




「っ‥‥‥。」

いきなり優しく抱き締められたものだから、凪は少し恥ずかしかった。
心臓というのは、これほど高鳴ってもはち切れない。
人の臓器はよくできていると改めて感じた。




「……どうしたの?」

「……………。」

「ねぇ、恭弥……。」




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