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「また来たの?」

「ずいぶんと失礼な挨拶ですね。」

再び訪れても、骸と雲雀の仲は変わらない。
今にも取っ組み合いが始まりそうな雰囲気の中、骸は「今日は仕事で来ただけだ。」と言い聞かせて心を落ち着かせていた。




「はぁ………。」

この屋敷に来る前、できるだけリラックスした状態で会おうと色々な努力をした。
ソファーで充分な睡眠をとり、寝起きには牛乳を飲む。
そして好きな音楽を聞きながら雲雀のもとに来た。

…にも関わらず、いざ雲雀を目の前にすると心が乱れて平常心では無くなっている。





「まだまだ子供です…。」

「何か言ったかい?」

「いえ。」

自分の幼稚さを反省し、即座に頭を切り替える。
骸は正一から渡された書類を雲雀に差し出した。




「で、今日は何て騙されたの?」

「今回はちゃんとした仕事で来ました!」

「へぇ珍しい。」

「ッ…君がこの書類を受けとってくれれば、今回の仕事は終わります。」

「ふぅん…。」

「ふぅんって……。
ちゃんと話を聞いてますか。」

「聞いてるよ。」

でもコレがね。

そう言って雲雀が指差したのは骸の腕。
骸は雲雀が指差した腕を見るが、特に汚れてもいない。
すると雲雀は骸の腕、厳密に言えば着ているスーツをクイッと摘まんだ。




「な‥何なんですか。」

「そもそも、僕の領域にそんな格好で来ていいと思ってるの?」

「…………はい?」

骸は自分の服装を確認するが、いたって普通の黒いスーツとワイシャツを着ている。
しかし雲雀は何故か気に食わないらしい。




「何か問題でも‥?」

「女は特にそうだけど、僕の屋敷では着物が基本だよ。
だからさっさと着替えてきて。」




















・・・・・。



「は‥‥い‥?」

雲雀の言動に、骸は思わず口をパクパクさせて驚愕する。

着物?
え、着物?
着物って何ですか。
なぜ仕来たりがあるんですか。
というか、前回来たとき何で教えてくれなかったんですか。




「え‥‥ちょ、」

「じゃぁ、部屋の案内は草壁に任せるから。」

そんな格好で頼まれても、僕は書類を受け取らないからね。

ピシャリと障子が閉まる。
雲雀が出ていき、1人取り残された骸は何がなんだかわからない状況に陥った。
しかし、いつまでも悩んでいられない。




「郷には郷に従え‥ということですか。」

一気に反論したいところだが、これ以上話をややこしくしたくない。
というか仕事が終わらない。

よくよく考えた結果、骸は黙って雲雀の屋敷の仕来たりとやらに従うことにした。




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