雲凪番外編[4人の関係2]
小鳥が外で鳴いている。
いつもだったら朝食は既に終わっているが、今朝は違う。
雲雀は台所のすぐ近くに来て、2人の会話を盗み聞きしていた。
朝食作りの手伝いが嫌だったのもあるが、白蘭が凪に手を出さないか見張るため。
「……………。」
「それは恭弥が欲張りなだけだと思う。」
「うわ、それ本音?」
「だって恭弥が好きなのは骸様だから。」
シュンとした声は、今まで心の中で思っていた本音。
面と向かって言えないことは、周囲の人に相談するだろう。
骸や雲雀を除くとしたら、残るのは白蘭しかいない。
雲雀のこの考えは当たっていた。
(直接言えばいいのに、)
女というのはよくわからない。
「そうだね。
このままだと取られちゃうかもしれない。」
「……平気そうね。」
「そう見える?」
「うん。」
「それはヤバいな。」
そう言いながらも、白蘭は焦りもせずクスクス笑っている。
これは骸が自分のもとから離れないという自信があるのか、それとも骸を手放してもいいという意味なのか。
その場にいても、白蘭の考えは理解できなかった。
おそらく白蘭の近くにいる凪でさえ理解できないだろう。
「骸君が奪われたら、か。」
「……………。」
「まぁそんな事になったら君を奪うだけだよ。」
雲雀の体がピクリと反応する。
「わ、私?」
「そう。
これならおあいこでしょ。」
一般人では考え付かないことを当たり前のように言った。
凪は動揺し、少々困っているようだった。
雲雀も白蘭の発言に驚き、柄にもなく焦ってしまう。
そんな2人を差し置いて、白蘭は淡々としゃべりだした。
「婚約した人間は奪えないなんて誰が決めたの。」
「でもそれは常識で、」
「時と場合、あと人によって常識のラインは違ってくるよ。」
「でも…。」
「でも?」
「私は…貴方には惹かれない。」
白蘭の突拍子な発想以前の問題。
好みに合わないという理由で、凪は白蘭の魅力を拒んだ。
そのはっきりとした答えに白蘭は笑う。
「っはは。
僕には魅力が無いんだね。」
「そうは言ってないけど、私は恭弥の方が…。」
そう言い掛けて言葉は途切れた。
「……………。」
全てを知った雲雀は、手に汗を握りながら話を聞いている。
おそらく白蘭には気付かれているだろうが、そんなことは関係ない。
もしかしたら今、凪の本音が聞けるかもしれない。
もしもの時に備え、雲雀はトンファーを手にいつでも白蘭を咬み殺せるよう準備をしていた。
「やっぱりね。」
「?」
「本命である骸君の傍にいたいから、雲雀君は骸君の近くにいる自分と恋仲になった。」
君はそう考えてるでしょ。
戻る